拝啓、ユーフェミア様。
おれやっぱり、この人と一緒にやっていける自信がありません。
メガネにスーツ。
ノートパソコンのコンソールにはしる長い指。
モデルみたいな綺麗な足は偉そうに組まれていて。
時折、メガネの奥で紫の瞳が煌めく。
そんないかにも知的で高貴なオーラを纏う彼の横には。
(なん…で……!?)
いつも可愛らしいテディベア。
ロマンチカ★デイズ。
「な、ん、で!」
午前6時、27分。
高級マンションの最上階で、枢木スザクは声を張り上げた。
目の前には編集社から送られてきた本。
ちなみに。
ピンク色の背表紙で、表紙はメガネの男が自分よりも背の小さい青年を抱きかかえているイラスト。
俗に言う、BL小説である。
「ルルーシュっ!!」
「ん?何だ」
俺はいま原稿の執筆で忙しいのだが。
ちらりとスザクの方を見たかと思えば、すぐにパソコンに視線を戻す。
テディベアのおともをつれたルルーシュはスザクを相手にする気はないようだった。
しかしスザクはそのBL小説を片手に今にもブチ切れそうな勢い。
「これっ、どういうことだよっ!!」
BL小説を見えるように開き、パソコン画面を遮るように彼に見せた。
挿絵が入ったそのページを。
「んっ、やだぁっ」
「やだ?嘘つくなよ」
ベットに押し倒した華奢な体が、首筋を舐めあげたことによってびくりと跳ねた。
早くも涙目になっているが本気で抵抗してこないのを見ると嫌ではないのだろう。
本気を出した朱雀の身体能力に敵わないことは、彼は良く理解していた。
「気持ち良くなりたいだろう?」
「っ、そんな…ことっ……あ、ひぅっ」
今度は耳たぶを甘噛みしてみる。
ぴちゃぴちゃと音をたてて耳を舐めまわしてやれば、感じるのかびくびくと体を震わせて目を閉じた。
「俺に委ねろ。気持ち良くしてやるから……」
「って何だよッ!!」
「俺が書いたBL小説だな。」
「そんなのは分かってんだよ!!問題なのはどうしておれがこの小説に出てるかってことだ!」
挿絵はまたもメガネをかけた男が、自分よりも小さな青年をベットに組み敷いているイラスト。
文章からすると、組み敷かれている青年は朱雀というらしい。
スザクという片仮名の名前を漢字に変換しているだけに感じる。
名前が無断で使われるのも嫌だったが、何よりBL小説の登場人物として登場させられているのがスザクには堪えられなかった。
それに。
「このあらすじ!」
今度は本を閉じ、裏表紙に書かれたあらすじをルルーシュに向ける。
大学に進学することになった朱雀。
自宅から遠いため一人暮らしを始めようとするが、部屋を見付けることが出来ずにいた。
なんとか親友の紹介でとある人物と同居することに。
しかし、同居を始めた彼は天才で鬼畜な小説家だった……!?
「これまんまおれの話じゃないか!」
「そうか」
「そうかじゃないっ!」
コーヒーの入ったマグカップを持ち上げて、ルルーシュは笑う。
スザクは余裕なルルーシュの態度にイライラしてしまい、赤かった顔がさらに赤くなった。
こうなったスザクの攻略が簡単なのは、当然ルルーシュは承知済みで。
「隙あり」
「う、わ!」
腕をぐいと引かれて、ルルーシュの膝の上に乗せられる。
腕の下からルルーシュの手が延びて、スザクが身動きできないように抱きしめた。
――――――――
続きます(笑)
夏休みの暇さを持て余す学生の強行です。
櫻井さんがかわいいですよ、「ロマンチカ」!!