Novel::::

□口唇
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口唇



麗らかな午後のひと時。

穏やかな波間を進むサニー号。

“平和”という言葉ほど、この一味に

不向きなものはない。

特段することもなく、クルーたちは各々

思い思いの時間を過ごしていた。

そしてこちらにも、ヒマを持て余す者が。

甲板にうずくまる影が2つ。

「なぁサンジぃ」

「…どうした、船長?」

「おれ、前から思ってたんだけどさぁ…」

「ロビンの口唇って…美味そうだな?」

甲板に横たわるサマーベットに、

横たわるロビンの姿。

その寝顔を見つめ、サンジとルフィは

同時に深くため息を吐いた。

「…レディの寝顔で妄想するたぁ、

お前もちょっとは“男”になったな…」

咥えたタバコを燻らせながら、サンジは

遠い目をして青空を仰いだ。

「おれは生まれてずっと男だぞ!」

「そういう意味じゃねぇよ」

「じゃあどんな意味だ!」

大声で叫びながら、勢いよくルフィが

立ち上がる。

「黙れ!ロビンちゃんが起きちまう!」

それを戒めるためサンジも立ち上がり、

ルフィの顔面に踵をめり込ませた。

「はひ…すびばせぶ…」

あいにく全身ゴム人間のルフィには、

大してダメージはない。

が、黙らせるにはそれで十分だった。

膨らんだ風船が萎むように、

2人は再び肩を並べてしゃがみ込んだ。

ロビンは未だ、規則正しい寝息を

立てている。

胸には読みかけであろう、古く分厚い

本が開いたまま伏せられていた。



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