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□心赴くままに
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くままに








「あー、参った…」



金色に輝く月を見ていたら何だか無性にあの子に会いたくなった。

上忍連中との集まりで酒という酒をしこたま飲まされたせいで、

実は結構酔っていたりなんかして。

だからってわけじゃないんだけれども、

このまま酔いに任せてみるのもたまにはいいかなと思ったんだ。

まあ、とは言え…



「起きてるかなー?」



こんな時間に押しかけたってあの子は絶対に寝てるだろうし。

きっと、また、

勝手に部屋へ上がり込んだことを怒られるんだろうなって、

容易に想像できるのに。



「ナルトぉ…」



あの子の名前を一度口にしてしまったら、

ほんとにもう駄目で。

自然と走り出した足を自分でも止めることができなかったんだ。

そう言ったら、

今のこの現状をこの子はいつもみたく許してくれるだろうか?



「あー、参った…」



――…でも落ち着く。

気持ちよさそうに眠っていたその子どものベッドに潜り込んで、

小柄な体を後ろからそっと抱きしめた。



「ナルト…」



柔くてあったかくて。

寝顔だけ見たら帰ろうという考えは、

端からなかったみたいにキレイさっぱり頭の中から消えていた。

細い金糸に鼻先を埋めるといい匂いがして笑みが止まらない。



「ナルト…」



揺れた毛先が弛んだ頬をくすぐって、

ますます込み上げてくる何かをちんまりとした旋毛にキスを落として誤魔化した。



「ナぁルト…」



1週間ぶりの子どもの体温はとても心地がいいもので、

これはゆっくり眠れそうだと思う。

だから、まあ、



「おやすみ」



兎にも角にも明日の言い訳は明日考えることにして。

俺はナルトを抱きしめてナルトは俺に抱きしめられて、

ただ静かに眠るのだ。
















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