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□嬉しい気持ち
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嬉しい気持ち
ナ:う…
うずまきナルト、
12歳。
職業、忍者。
夢は、木ノ葉隠れの里・火の国最強忍者、火影になること。
しかしながら、今はまだ下忍の身。
意外性ナンバー1のドタバタ忍者とは、担当上忍曰わくであるが、
日々の鍛錬を怠らない努力家であり、
仲間を大切にする優しさと心の強さ、
そして、
何事も最後まであきらめないド根性なら誰にも負けない、
将来、優良株の忍者だ。
――…が、
ナ:く、来るな…!来るなってばよっ…!
実は今、結構なピンチだったりする。
正面を見据え、対峙している相手と一定の距離を保っていたのが、
じりじりと後退っていたせいで、気づけば岩と岩の間に追い詰められてしまっていた。
こういう時こそ、
一瞬の隙をついて相手の脇を抜けるには、ナルトの小柄な体が非常に役に立つのだが、
如何せん、
カ:ふふ、もう後がないみたいだけど?
ナ:う…
カ:いい加減あきらめなさいよ、ナ〜ルト♪
ナ:うー…
――…相手が悪い。
左目を額当てで隠し、鼻と口を布で覆って顔の半分も識別できない、
一見、
ただの変質者にしか見えないくせに、
これでも里が誇る立派な忍者で、しかも上忍。
ナルトが所属している第七班の隊長でもある、
はたけカカシ、
26歳。
その人なのだから本当にタチが悪い。
カ:ほらナルト、素直に先生の胸に飛び込んで来なさいよ?
ナ:や、やだっ!
カ:もー…。痛くしないって言ってるでしょ?
ナ:い、いいってば!やるなら自分でっ…
カ:だーめ!下手に自分でやって傷つけたらどうするの?
ナ:だ、だから!いつもは自分でやっ…
カ:だいじょ〜ぶ♪先生これでも上手なんだよ?気持ちよくてうっとりしちゃうから、絶対♪
ナ:や、だからっ…
カ:うーんと優しくしてあげるから、ね?
ナ:っ…
カ:ほら、おいで?
ナ:――…
なんて、
普段の任務では考えられないくらいの甘い声で言われても、
その申し出を受けるわけにはいかないのだ。
だって、
だって、
何だかちょっと…、
カ:ナ〜ルト?
ナ:……
カ:ほらおいでって〜?先生と一緒に気持ちいいことしようよ〜♪
ナ:……
――…怪しすぎ。
言ってる言葉が、何だかすーーーっごく卑猥に聞こえるし、
先生から漂うチャクラは見たこともないピンク色をしているしで、
とっても危ない。
迂闊に捕まったりなんかしたら絶対だめっ!
なのだと、野生の勘が言っているのだ。
――…や、
ただの、
ただの“耳かき”の話なんだけれども…。
カ:ほらナ〜ルト?
ナ:ひ…
いくら上司からの申し出とは言え、
カ:こっちにおいで♪
ナ:ひぃ…!
大きく広げられたその腕の中には、
飛び込めませんっっっ!
ナ:せ、せんせぇ…
カ:うん?
ナ:ごめん!遠慮しとくってばっ…!
カ:!
―――ボンッ!
ほんとは任務以外で煙玉を使うのはいけないことなんだけれど、
背に腹は何とやら。
この煙幕で相手の視界を遮って、
下忍の、しかも子供の足でどれだけ距離をとれるかわからないけれど、
必死に走れば、
朝まで身を隠せる場所くらい見つけられるかもしれない。
ナ:!!?
――…とか、
淡い期待も、
僅かな希望でさえも、
カ:ふふ…
ナ:……
カ:捕ま〜えた♪
ナ:……
この人の前では、
到底叶わないのだとわかっただけ、
今日も賢くなった。
そう、
思っておこう……。