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□わがままアニマルとやさしい相棒と*
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わがままアニマルとやさしい相棒と
「ダニー」
頼むからそんなに甘やかさないで欲しいと、スティーヴは思うのだ。
「ダノ、ダノ…」
ダニーの肩口に顔を埋め上がった息を整えながらダニーを呼ぶスティーヴに、ダニーは困ったように笑いながら「何度も呼ばなくたってちゃんと聞こえてる」と言うのだけれど。
呆れたような口調とは裏腹に、スティーヴの汗ばんだ背中を抱き締め労わるように撫でてくれるダニーの手はいつだって優しくて、参ってしまう。
だからスティーヴだって困ったように笑いながら「愛してる」と返して、いつものように「あとでちゃんと洗ってやるからな」と付け足すと、背中をバシッとひとつ叩かれ「それはやだっていつも言ってんだろ!」と怒られた。
「叩くな。痛いだろ…」
触れ合った素肌から離れるのを惜しむようにことさらゆっくりとダニーの上から起き上がり、むっとした顔で真下にいるダニーに文句を言っても、スティーヴと同じようにむっとした顔で「叩かれるようなこと言うあんたが悪い」と一蹴されてしまう。
愛されているという自覚は大いにある。
セックスが終わってちょっとした言い合いをしているときに実感するのもどうかと思うが、文句を言ったスティーヴに文句で返してきたダニーの両腕が、それでもしっかりとスティーヴの首の後ろに回されているのを見ると、スティーヴはどうしたってしかめた顔をキープできないでいる。
ダニーを愛しダニーからも愛されていると実感して思うのは、決まってW頼むからそんなに甘やかさないで欲しいWというわがままだった。
「何笑ってんの?俺の話、ちゃんと聞いてた?」
「笑ってない。お前の話はちゃんと聞いてたし言いたいこともわかるが、それはダメだ」
普段きっちりと整えてあるダニーの髪は今、枕の上で随分と乱れているが、それを乱したのはスティーヴだ。
ダニーの鍛えられた両腕は首の後ろに、意外と細い両足は腰を巻くようにとスティーヴ自身が促し、スティーヴは先ほどまでダニーの上で夢中になって腰を振っていた。
「何でダメなの?」
「何ででも」
スティーヴの逞しいペニスを受け入れると腹が圧迫されて苦しいはずなのに、ダニーは綺麗な青い瞳を潤ませてスティーヴを見つめ返すだけで、時折「あんまおっきくすんな、バカ…」とスティーヴを無駄に煽ってくるだけで、いつもの文句はほとんど聞かない。
ダニーの中はスティーヴが出て行こうとするときゅうっと吸いついてW出て行くなWとばかりに締めつけてくるし、腰を進めようとするとうねうねとうねってWもっと奥!奥!Wとばかりに引っ張り込もうとしてくるものだから、スティーヴは我慢するのが大変だった。
ダニーの中は気持ちがよすぎて、だからスティーヴはいつも、すぐにでも欲を吐き出したいという欲まで生んでしまうのだけれど…。
「説明になってない」
「説明も何も…。お前ひとりに後処理を任せたら、夜中に何度、ベッドとトイレを往復すると思う?」
スティーヴの下で、スティーヴの動きに必死になってついてこようとするダニーはやたらと可愛いし、はふはふと乱れた吐息の合間に零れ落ちる「あ、あっ、はあんっ…」という喘ぎ声や時折耳に届く「スティーヴ、スティーヴンっ…」と甘く名を呼ぶ声をもっとずっと聞いていたいと思うと、スティーヴは俄然やる気になってがんばってしまう。
あとでダニーからぐったりした顔で「あんたしつこいよ…」と叱られることの方が多いのだけれど。
それでもやっぱりひとたびスイッチが入ると、スティーヴはダニーを愛することに夢中になってしまうのだから仕方がないし、ダニーにはもうそこは諦めてもらうしかないわけで…。
「そりゃ、悪いと思ってる。あんたまで夜中に起こすことになってさ…」
「違う。そうじゃない」
ピストンを速めると一瞬びっくりしたような顔を見せはするものの、上がりそうになる嬌声を誤魔化すようにスティーヴの頭をぐいと引き寄せキスを強請るダニーに、スティーヴは苦笑しながらそれに応じてやるのが好きだった。
ギッシギッシとベッドを鳴かせるような激しい運動で額に浮いた大粒の汗が、頬を伝い真下にいるダニーの上に落ちてしまうと、それに気づいたダニーが苦笑してそっとスティーヴの額を拭ってくれるのを見るのも好きだった。
たまらなくなってWダノっ…Wと掠れた声でスティーヴが呼ぶと、ダニーはその水分過多の青い瞳にしっかりとスティーヴを映し、目を細めて微笑んでくれるのだ。ふんわりと。
それはまるで花が咲くように美しくて、だからスティーヴはいつも調子に乗ってわがままを言ってしまう。
Wこのままお前の中でイキたいWと。
ダニーの身体に負担を掛けないよう普段は必ずスキンを使うようにしているが、たまに使わないときもある。スティーヴがどうしてもと強請ってダニーがそれを承諾してくれたなら。
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