The Shine of Fenril
□白銀の都市
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街についたのは昼飯時を少しばかり過ぎた頃だった。
街の中はカトレウスの乳母が言ったとおり、どこも人で溢れていた。
「すごい…。
本当に人だらけだね」
「そうだな。ウォルウールより人多いかもな…」
海水浴や観光シーズンのウォルウールでもこんなにいっぱい人は集まってこない。
本当に世界中の至るところから人々がこの街に集まって来ている。
この中からリックたちか、リックたちの手掛かりを探すとなるとかなりの時間がかかりそうだ。
まずとりあえずこれからのことを考えて、拠点となる宿だけはなんとしてでもおさえておきたい。
「カトレウス、宿街みたいなところあるか?」
「…たぶんあったと思うぞ。…ほら……」
カトレウスはどこからかとってき街の案内地図を開けて、レイドに見せた。
宿が沢山集まっている宿街は意外と近くにあるようだ。
「…よしまずは、宿を確保するか…」
「うん、そうだね」
本当に人が多いので、レイドは迷子の名人イレーヌとはぐれないように、手は少し恥ずかしいので腕を握り歩き出した。
何故この街にこんなに人が集まるのかそれは、
世界で最も信仰されている宗教エカラ教の最高権力者が治める国《聖カトリア教国》の次期教皇ルキウスと、最近再建を果たしたブラングル王国が世界に誇る歌姫、シエラの婚約発表があったからだ。
挙式を挙げる日程はまだ不明だが、シエラがカトリアに嫁げばもう二度とここで彼女の歌声が聞けなくなるのを惜しんだファンたちが今、世界中から一斉にこの街につめかけている。
だからこんなに人が多く集まって来ているのだという。(byカトレウス)
こんなに人が多かったら宿がとれるかが問題になってくる。
まずは一番近くにあるそこそこよさそうな宿の中に入ってみることにした。
「…すいません。只今満室となっております」
一件目、宿に入る前に気の弱そうな店員にそう言われ、レイドは舌打ちして店員を睨み付けた。
まだ宿に入ってもないのに……。
「ほんとうに申し訳ありません……」
店員は語尾をどんどんと下に下げ、レイドから目をそらすと、慌てて宿の中に入っていった。
「レイド店員さん脅しても仕方ないでしょ?」
イレーヌはため息をついて、レイドを見た。
「……でも…「一か所にこだわらない。
他にも宿あるでしょ」
イレーヌにそう言われとりあえず気を取り直して、レイドたちは隣の宿に入って行った。
「スミマセン……」
入って30秒もしないうちに外に出された。
なんかそっけない態度の店員たちに腹が立つ。
でかい建物の中全部に本当に人が入っているのだろうか?
「…ちっ………」
「レイド次、次行こう!!」
カトレウスは、剣の鞘に手をかけて黙りこむレイドの背中を押し、3件目の宿に入った。
3件目の宿のロビーにはそんなに人はいなかった…。
ここならいけるだろう。
レイドは愛想のいい笑顔を浮かべてこちらを見てくる店員を見た。
「いらっしゃいませ〜部屋は空いて……」
「部屋は空いてるのか!?」
思ったとおり。ラッキーだ。
レイドは嬉しそうな顔をしているイレーヌと顔を見合わせてカウンターへと近寄った。
しかし…レイドたちがカウンターに近づいた瞬間急に店員が180゚態度を変えた。
「お客様すみません。
只今全部屋満室となりました!!」
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