The Shine of Fenril

□白銀の夢
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真っ赤な暁の光が東の空にさしたころ、明けの明星が淡い空で美しく煌めいていた。


『…Earth?』


透明で清んだ若い女の声がまだほの暗い生命の神殿の中をこだました。


――…ここは…生命の神殿…何でここに


朦朧とする意識の中レイドは辺りを見回した。
あんまりよく覚えていないがルネリアが作り出した闇の扉にイレーヌを連れて入って、そこから気がついたらまた神殿の中にいた。しかも周りにみんなはいない。もしかしてはぐれてしまったのだろうか?
一体何がどうなっているのか状況が全く分からない。
とりあえずレイドは、状況を探るために昇る朝日に照らされる2人のまだ若い男女を見た。


一様隠れてはいるものの、けっこう2人のすぐ近くにいるのに2人はレイドには全然気がついていない様子だった。



『忘れられた神サマいや、この星の本当の名前らしい。
なぁアーデは神サマってどういう時に死ぬか知ってるか?』


男は朝日を見つめながらアーデと呼んだ女性に問い掛けた。


『さぁ?』


『神は人々から存在を忘れられた時その役目を終える…すなわち死ぬ…。
神なんて、所詮人の心の中でしか生きれない妄想の産物だ』


そう神の死を語り、昇る朝日を見つめる男の後ろ姿がなぜか、ひどく寂しそうにレイドの瞳に映った。


『本当にそうなの?』


女はそう言うと綺麗な真紅の瞳で男を真っ直ぐ見つめた。
男を見つめる女の表情があまりにも希薄だったのでなんだか気味が悪かった。
なぜか女自身どこか生きている人間という感じがしない。まるで物言わない無機物が喋っているような違和感があった。


『人間だって同じようなものじゃない?
例えばもし私が死んでも、しばらくの間は私という存在は私を知るみんなの心の中に生き続けられる。
けれどみんなから忘れた時、私はこの世界から本当に消えてしまう…。本当に死んでしまう』


女はそう言うと男の手を両手でしっかりと握りしめた。


『神様も人と似たようなもの。
それに私も、ウェンも、アレスも、イレーヌも、ルネリアも、ダーレスも、きっとこの世界のどこかで生きているあの子たち……レンもレイドもみんなあなたのことを知ってる。
あなたがちゃんと心の中にいる』


『……アーデ』


――なんで…俺や兄貴たちの名前を…


第一、レイドはあの男女2人のことなんて全く知らない。
会ったのも見たのも今が初めてだから、当たり前だが、顔も名前も知らない。



イレーヌやシスコン皇帝の名前まで知っているあの女一体何者なのだろうか
レイドはもっと詳しく話しを聞き出そうと2人に近寄った。





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