The Shine of Fenril
□闇のむこう
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気が付けば空には満天の星広がっていた。
レイドは痛む頭を押さえながら瞳を開けた。そして、ぼんやりした頭で記憶の糸を辿る。
糸を辿り、最後に浮かぶ顔それは、イレーヌの悲痛な表情とウェンの勝ち誇った笑み。
一体あれからどれぐらい気を失っていたのだろうか? パッと見たところまだ夜は明けていない。しかしまだ夜が明けてないといって安心してられない。
もしかしたらあれから何日もたっているかもしれないのだから。
レイドはあちこちにはしる激痛をこらえて体を起こした。
最悪なことに傷跡は、まだ塞がっていないようでうっすらと血が滲んでいた。
渇いた血がこびりついている服を再び血が汚す。レイドは、上着を破ってそれを傷口にあてて縛った。簡単な止血処置をしてから、おぼつかない足取りで再び歩き出した。
真っ白な月の光を浴びて、白銀色に輝く生命の神殿に向かって。
風が吹かない湿原の中は、異様な空気に包まれていて、かなり気分が悪い。
まだイレーヌは無事だろうか。
一歩、一歩腐った木で出来た道を歩くたびにとてつもない不安と、最悪の場合の光景が頭に浮かぶ。
レイドは祈るような気持ちで一歩、また一歩進んで行った。
そして重たそうな石造りの扉の前で、その足を止めた。
「……イレーヌ……」
イレーヌはただの人間ではないことは、レイドもうすうす気付いていた。
死んだ筈のフィラ第3皇女様であったり、不死を習得する為の実験の実験体だったり、最後にはアターシャと同じとか、正直もう、わけがわからない。頭の中がぐしゃぐしゃだ。
レイドは別にイレーヌが何者であってもあまり気に留めなかった。
例えアターシャだったとしてもイレーヌはイレーヌで、イレーヌはレイドの、大切な……そう、大切な家族に違いはないのだから。
レイドは腰に吊している剣に手をかけ、石で出来た巨大な扉に手を翳した。
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