The Shine of Fenril
□崩壊
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乗り込むとすぐに、トラスタナ港から春日国行きの船が出港した。
ここから3日間は船での旅になる。
「あたし生まれて初めてこんなデカイ船に乗るよ」
楽しそうなリラとは対照的に、レイドはベッドの上で深い溜め息をついていた。
「レイドもう酔ったのか?」
「違う!! ……うぅ……」
「酔ったんだったら寝たら? 私たち隣の部屋に行くから。ねっリラ、リック」
「あぁ、うん」
「痛い、おいイレーヌ、リラ、引っ張るな」
イレーヌとリラとリックは隣の部屋へと移動した。
「イレーヌ〜彼女とレイドを2人きりにしていいの!?」
廊下にでるとリラはそう意地が悪そうな声でイレーヌに言う。
「うん。だってレイドは大切な人がいるから」
イレーヌはそう言うと笑顔を浮かべ、部屋に入った。
「ちょっとイレーヌ冗談だよ!? クリスはただの……」
リラはイレーヌの船室の扉をドンドンと叩いた中からイレーヌが「分かってる」と返したのが聞こえたので、ドアを叩くのを止めた。
「もう……。ちょっとリックあたしご飯食べてくる」
「あ、あぁ……」
リックはイレーヌの様子が変だったのが気になって、部屋に近づいた。
ドアに耳を当てると微かに泣き声が聞こえてきた。
心配になったのでリックは意を決してドアをノックした。
「イレーヌ、入るぞ」
ノックしたが、いちようそう声をかけ、イレーヌの船室に入った。
リックの思った通りイレーヌは目を真っ赤に腫らして泣いていた。
「イレーヌ。落ち着け。大丈夫だからなっ?」
「リック……」
そのころ、レイドは。
「……お前はいつまでここにいるつもりだ?」
レイドは椅子に座り菓子をつまみながら本を読んでいるクリスを睨み付けた。
レイドなら間違っても乗り物の中で本を読んだりしない。読んでるやつを見てるだけで余計に気分が悪くなる。
「せっかく、イレーヌが気を利かしてくれたんだ。昔話でもしないか」
「昔話?」
レイドは首をひねった。
「あぁ、私とお前が初めて会った時のこと、お前は覚えているか?」
きっとレイドは覚えてないだろうクリスは苦笑いを浮かべた。
しかしレイドはクリスと初めて出会った時のことを話し始めた。
「あれは、桜が散るころだったか……」
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