The Shine of Fenril
□砂塵の中の記憶
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「よし、そういってる間についたぞ。トラスタナ王都フォール・クバン、別名砂漠の摩天楼に」
リックは何故か珍しくテンションがかなり高い。その隣でリラもすごいーっと叫んでいる。
確かにここ何日かずっと車に乗っていたのだ、砂と岩ばかり見ていたので建物とかがとても新鮮に見える。
けれど、照りつける太陽による、うだるような暑さのせいで全然2人みたいにはしゃぐ元気がない。
「お前ら暑いのに元気だな……」
レイドは呆れながら、楽しそうにはしゃぐ2人を見つめる。
「なぁイレーヌも思わないか」
ふと隣を見ると、今まで立っていたイレーヌがいなかった。
「すごい!! こんなに暑かったら目玉焼きつくれるかな?」
イレーヌもあの2人と一緒に、はしゃいでいた。
「おい!! こんなくそ暑い場所で遊んでないで早く宿に行くぞ」
レイドに一喝されて3人はようやくはしゃぐのをやめた。
主にこの都の建物は《干しレンガ》というレンガで作られているという。
都の広場のようなところでは派手な化粧を施している踊り子達が魅力的な踊りを披露していてついつい見とれてしまう。
宿屋はその広場のような場所の近くにあった。
宿に着くと、とりあえず部屋に荷物を置き、これからどうするかを話し合った。
さすがに一時間後に出る今日の最終便に乗るのは辛いので、明日の朝に出る第一便に乗ることになり、各自、船が出る明日の朝まで自由行動にすることにした。
自由行動にするといっても、暑くて動く気にもなれない。ウォルウールもかなり暑かったが、周りに海があったので、ここよりは幾分マシだった。砂の海を見ていると、ウォルウールの青い海が恋しくなってくる。
「ねぇイレーヌ、これから一緒に買い物行かない?」
「うん、行く行く!!」
イレーヌは嬉しそうにそう返事をすると、リラと一緒に宿を飛び出して行った。
少し前まで倒れていたとは思えない元気さだった。
レイドは少し砂っぽいベッドの上に寝転んで、半分呆れながらその様子を見ていた。
「ったく金ないんじゃなかったのかよ」
「いいじゃないか。いい気分転換ができて」
リックは薄く笑いながらそう言うと、ドアノブに手を伸ばした。
「どこ行くんだ?」
レイドは上半身を起こしてリックを見た。
「俺も気分転換だよ」
リックはそう言うと、どこかへ出掛けて行った。
一人部屋に残っているのもなんだか寂しいので、仕方なくレイドも外をぶらつくことにした。
宿屋の外に出ると、太陽の光がジリジリと体を灼かれる。風が吹くたびに砂漠からの砂がフォール・クバンに降り積もる為、埃っぽい。それが目に入ったりすると痛い。
フォール・クバンは思ってたよりもとても広かった。
とりあえず街の案内係からもらった、パンフレットを広げて街の観光スポットをブラブラと巡ることにした。
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