短編小説
□サクラナキミ
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サクラナミキ
柔らかいそよ風が桜の花弁をそっと運んだ。あの日の君との思い出と共に…。
――満開の桜並木の下、走り回ってよくつまづいて膝が擦り傷だらけになっていたの覚えてる?
――ふざけてお互いをおいかけっこしててだろ?覚えてる。
桜を見ると溢れだす
まだ2人が小さかったころの桜の下での思い出が…。
あのときのバカみたいなことばっかしているときの光景が、綺麗によみがえる
――桜に手を伸ばして舞い散る花びらを一緒に掴もうとしたことも
――朝早く起きて初めて自分で作ったお弁当。
おせじにも綺麗な形じゃなかったけれど崩れかけた卵焼きを美味しいって言って笑いながら食べてくれてくれた君の笑顔も…。
本当にこの前のことのようで…。
君の笑顔を、君といられたあの時間を思い出すと自然に涙が出てくる。
もう…あれから何年もたつんだよね…
嘘みたいに楽しい日々は過ぎるのは早くて……。
気が付けば…桜並木の下を歩く、私の隣にはもう君はいなくて。
――毎年…毎年この時期になると2人で桜並木を歩いたよね。覚えてる?
――…忘れられるかよ
たまにケイタイをあけるとお前からのメールが来てる。
――元気?
ちゃんとごはん食べてる(笑)
バイトに力を入れすぎないでちゃんと勉強もしろよ〜
って…相変わらず心配性なお前。
でも…離れていても俺みたいな奴のことを忘れないでくれてマジで心配してくれていたことが、かなり嬉しくて。
独り暮らしを始めたてのときは思わず涙が溢れた。
――夢を追う君は輝いていてとても素敵だった。
――でも…本当に夢を叶えられるかどうか不安になった。
頑張っても結果がでないこともあった…。
イラついてお前にあたってしまったこともあった。
――でもそんな色々なことを乗り越えられたから、今の君がある。夢を叶えられる力を持つ君がいる。
――合格、おめでとう
――支えてくれてありがとう。
面と向かっては恥ずかしくて素直に言えない言葉だから電話ごしでお前に、君に伝える心からの感謝の祝福の言葉。
2人とも…大きくなってお互いの夢を追って別々の道を歩き始める…。
歩む道は違うかも知れない…。
けれどどんな道の上にも空はある。
道は繋がってなくても空は繋がっている。
桜舞い散る空…
もう2人でこの桜並木は歩くことはないかもしれない。
だけど寂しくないよ。
君との忘れられない大切な思い出がいっぱいあるから。
――たくさんの思い出をくれて…ありがとう。
――こっちこそ。
ありがとう。
――頑張って夢を叶えてね
――お前もな
桜が咲いて春がやって来た。
これから私たちは夢に向かって歩き出す。
歩いて行く道はきっと違う…けれど、綺麗な青い空は君の下にも繋がっているから。
お互いが夢を叶えられて大きくなった時、またこの桜並木の下で会いましょう。
小さな夢が満開に咲き誇ることを遠くからですが祈っています。
じゃあまたいつかこの桜並木の下で…
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