The Shine of Fenril

□異端の存在
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 月が赤く輝く不気味な夜

「弱い…。今の帝国騎士はこの程度なんだ?」

フィンとシスを見下すように言ったのはまだ幼さを残した少年だった。

「…くっ……」

「…はぁ…はぁ…待て!!」

フィンが少年に手を伸ばした時にはもう男は闇の中に消えていた。

騒ぎに気が付いたのか保養施設の中から誰か出てきた。


「2人共大丈夫!?」

そう言い、目を潜めて倒れているフィンとシスの元に駆け寄ったのは、まばゆいブロンドの髪に白衣を着た衛生班班長のシルヴィアだった。

「シルヴィア…急いで副長に伝えろ…陛下を…」

「分かったから喋らないで!!傷口が開くよ。」


シルヴィアはポケットからCC(コンパクトコンピューター)をとりだし、フィンに治療を施しながら飛鳥に連絡をとった。

「どうした?」

「外がうるさいと思ったので外に出てみると、フィンとシスが倒れていました。」

「何!?」

「フィンが、陛下を連れて今すぐここから逃げるようにといっていました。
おそらくかなり腕のたつ侵入者と思います。」

その時保養施設の中で断末魔の叫び声が聞こえた。

「!!…陛下は私が命に変えてもお守りする。だからシルヴィア、お前は2人の治療が終わり次第シリウス団長に連絡をとってくれ」

「了解しました。飛鳥副団長、どうかご無事で…。」

シルヴィアはCCをポケットに突っ込み治療に専念した




「飛鳥副団長…侵入者は、15〜6歳ぐらいの…うわぁ!!」

CCの画面から映っていた男の姿が消える。

「おい!!」

「……侵入者か?」

ダーレスがベッドから上半身を上げ飛鳥を見た。

「陛下…私が必ず陛下をお守りいたします。だからご安心して下さい。」


微かに笑みを浮かべてダーレスを見ると腰に吊るしていた愛刀《鳳凰》を鞘から抜いた。

まるで地下世界《アンダーワールド》から来た魔物のような禍々しい気を放ちながら侵入者はダーレスの病室に近付いてくる。

コツ コツと嫌な音が廊下に響き渡る。


飛鳥は鳳凰を構えて扉の前に立った。

病室の扉が空いたと同時に飛鳥は目の前にいる人物の首筋に鳳凰を突きつけた。

飛鳥は顔を上げ、少年を見た。

目の前にいる人物は殺された部下のいう通り、まだ幼さが残る少年だった。





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