The Shine of Fenril

□崩壊
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 クリスから色々ややこしいことを聞いてレイドは半分、放心状態で外をボーッと眺めていた。
 ちらりと目線をイレーヌに移した。イレーヌは何かをこらえているのか、唇をキツく噛んでうつむいていた。
 やはり聞いた内容がショックだったのだろうか。
 何か一言声でもかけようとした、その時。


「おい2人共に船に乗り遅れるぞ」

 後ろからいきなり、荷物を背負ったリックが話しかけてきたのだ。

「……リック、すぐ行くから、船のチケットもう一枚とっといてくれ」

 リックは返事をするより前にちらりとクリスを見た。

「おいレイド、お前彼女も連れてくのかよ?」

 頭にきたので、レイドはニヤニヤしながら、色々と詮索してくるリックの顔面に一発パンチをくらわせてやった。


「おいレイド、私はフィラやカトリアから追われている。……それに私を連れていってもたいした戦力にもならないぞ」

「別にお前の戦力なんかに期待してない。
……でもお前はエカラのことも、アターシャのことも、イレーヌのことも、ロードのことも、よく知ってる」


 クリスはレイドの言葉を聞いて鼻で笑い、レイドから目線をそらし窓越しに空を見上げた。


「そうか」

 クリスは微笑を浮かべ、レイドの後について行った。

 喫茶店の外に出ると、外で待っていたリラがイレーヌに駆け寄った。

「イレーヌ、どうだったレイドにプレゼント渡せた?」

 レイドに聞こえない小声でリラはイレーヌに話した。
 イレーヌは顔をうつむかせた首を横に振った。

「ストーカーのせいで渡せなかった」

リラは苦笑いを浮かべてイレーヌを見た。

「それでその髪飾りはどうしたの?」

「これは、レイドがくれたんだ」

「へぇー。アイツも女の子に贈り物するんだ……」

 意外そうにリラが言ったのは歩いていたレイドにまる聞こえだった。
 
「うるせぇ」

「アイツもあんな風に照れるものなんだな」

 クリスが笑いながらレイドを見る。

「うわ!! レイドの彼女さん。いつからここに?」

「ずっとここにいたが? それに私の名はレイドの彼女さんではなくクリスだ」

「ごめんなさい……クリス。って何で!? 何でなの!? レイド!!」

「黙れ」


 眼下にはエメラルドブルーに輝く海が広がっている。目的地のトラスタナ港についた。
 船員にチケットを見せ、レイドたちは春日国行きの船に乗り込んだ。



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