いろいろ


□会いたいとは言わないけれど
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 そしてバレンタインデー当日。

 予想通り、ニールとは時間が取れず、連絡すらとれなかった。だが、分かりきっていたことだと自分に言い聞かせた。少しの寂しさは無視して。

「・・・・・いつ、渡せるだろうか」

 確か次の休みには会えると、彼は言っていた。その時に渡せばいいかと考えていたとき。

 ♪〜

 彼が決めてくれた着信音が鳴った。この音が鳴るように設定しているのはただひとりだけだ。

「もしもし……」
『よう、刹那。久しぶりだな』

 しばらく聴いていなかった彼の声は、別の人間のモノのようだった。

「・・・・・久しぶりだな、本当に」
『悪い。言い訳になっちまうけど、』
「解っている。だからと言って、どうしろとは言わない。わざわざそんなことを言うために連絡してきたのか?」

 そう言えば彼は黙ってしまった。
 久しぶりの会話なのに素っ気なく返してしまう。いい彼女でありたいと思うのに、なかなか上手くいかない。
 しかしニールは言葉を返してくれた。

「・・・・・なぁ、刹那」


「・・・・・寂しいよ、刹那」

 その言葉を聞いた瞬間、刹那の中で何かが溢れ出した。


 毎日連絡をくれてそれで満足していたはずなのに。
 蓋をしていたところから今まで、我慢していたものが出てきそうになる。
 ここで言ってしまっていいのだろうか。しかし言ってしまえば、絶対に会いたくなってしまう。

「なぁ、刹那は・・・?」

 彼の声がやはりどこか寂しそうに聞こえるのは、自分に都合よく耳が聞き取ってしまっているからなのか。
 そんなことを考えている間についに口から零れてしまった。

「俺も、寂しい」

 それからはもう止まらなかった。絶対に負担にはなるまいと思って言わなかった言葉たちが、今のうちにと言わんばかりに口から出てくる。

「さみしい。会いたい」
『うん』
「会って抱きしめてほしい」
『それだけ?』
「いや、・・・たくさん話したいことがあるんだ。それから、」
「俺もさ、刹那。話したいこといっぱいあるし、抱きしめてキスもしたい」

「でさ、刹那」

ピンポーン。
訪問者を報せる音が響いた。

「すまない・・・・・。誰か来た」
『いや、いいさ。でさ刹那、あんまりにも耐えられないからさ・・・』
「ニール後でかけなおすから、今は・・・・・」

 鍵を開けてドアノブに手をかける前にドアは開かれた。

「『会いに来ちまったよ』」

 会いたくて会いたくて仕方のなかった、愛しい男の手によって。
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