いろいろ
□会いたいとは言わないけれど
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「そろそろバレンタインね〜」
バレンタインを一週間後に控えた日の夕方だった。
学校からの帰り道、隣を歩くルイスがふと呟く。
彼女は聞いても居ないのに、恋人である沙慈と如何に過ごすかを語りだした。
「沙慈とデートして食事して、沙慈からチョコをもらうの!やっぱりバレンタインは恋人と過ごさなきゃ!」
刹那はどうするの?と訊かれ、彼の事を思い出してはみるが、おそらく一緒に過ごすことは難しいだろう。
「やっぱり彼と過ごすんでしょ?」
「それは・・・・・無理だな」
「えー!なんで!?せっかくのバレンタインなのに!」
「だからといって、仕事の邪魔をするわけにはいかない」
刹那の彼氏であるニール・ディランディは、世界的に有名な企業ソレスタルビーイングに勤務している。
面倒見もよく、兄貴肌で優秀な彼は上司からも部下からも信頼が厚く大きな仕事を任されることも多く、休日でさえ2人で過ごすことは難しい。
それを寂しいと思わないわけじゃない。
しかし、それを言ってしまえばただでさえいろんな事を抱え込んでしまいがちな彼にさらに負担が掛かってしまう。
彼からはいろんなものをもらっているのに自分は何も返せていない。だからせめて仕事の邪魔だけはしないようにしようと決めている。
「良いじゃないそのくらいのわがまま!それくらい聞けない様じゃ、甲斐性無しじゃないの!」
「いいんだ。今だって毎日メールと電話はしてくれている。それだけで充分だ」
ム〜、としばらく納得がいかない様に唸っていたルイスだったが、やがて顔を輝かせ提案してきた。
「でもチョコレートはあげなくちゃ!それくらいは考えてるんでしょ?」
「しかし、渡す時間が・・・・・当日は、」
「いいの!何も当日にあげなくちゃいけないわけじゃないんだから、時間が取れたときにあげれば良いでしょ!」
「それはそうだが・・・・・」
「なら、沙慈と一緒に作りなさいよ。沙慈には1日前には用意しておいてねって言ってあるから、前日に作るはずだから」
半ば強制的に決められ、日時と材料を用意しておくことと言われてしまい、ルイスと別れた後とりあえず最寄のスーパーに向かうことにした。