命あっての物種

□てゆーか恋じゃね?
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心臓が

どくん、と脈打つ



-てゆーか恋じゃね?-





冷たい風が頬を撫でたかと思えば、いきなり雨が降る

(やばッ、傘持ってきてない…)


兎に角、喫茶店の入り口にある屋根の下で雨宿り


(早く家帰りたいのに〜。)


そう思った瞬間に雨が強くなって、俗に言うどしゃぶり

この日ばかりは神様を呪う


(毎日のほほん生きてるあたしになんの怨みがあるのよ)


宛ての無い怒りは雨にかき消され、ため息をひとつ


(もう濡れて帰ろ…。)


ずっとここにいてはラチが開かない
あたしは意を決し足を前に踏み出す


(いまだっ)
「おい。」
「ふぎゃっ!!」


前に出ようとしたら、誰かにぶつかった
なんて運のない、確かに誰もいなかった筈なんだけど


「お前か、儂を呪うたのは。」
「はい?」


ぶつかった人は、あたしと同い年くらいの黒髪少年で
学ランを今風に着崩している


(かっこいい…。)
「儂にこのような作業をさせるなど、おまえも運がいい。」


ぼーっと彼を見つめていると、目の前が真っ暗になった


「わっ、」
「呪うのはやめろ、これをやるから許せ。」


ばしゃっ


手に握らされた黒い傘
急いで傘を上げると、目の前に彼はいなくて
ただ通り過ぎる人ばかり


(いないし…。)


一歩前にでてあたりを見渡すが、彼らしき姿は見当たらない


(呪うって、あの人なんであたしの心読んでんの?)


のほほん生きてるあたしの思考回路は上手く回らなかった


(傘、くれたのかな)


あたしは、歩き出した
彼の傘を差しながら


「!!」


思い当たる節が見つかり、勢い良く上を向く
雨が掛かろうが関係無い


(…まさかね、テレビの見過ぎだわ。)


心臓が、素早く動いていた


(あの人、かっこよかったなあ。また会いたいな…。)


どうして彼が、彼女の心の奥を見れたのか


(あ、傘取りに来ないかな)


彼女の予想は的中してたんだけど、雨はやまなかった

どんより曇った空の向こうで、神様が微笑んだ






END
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