王子様はご機嫌ナナメ。


□弐.
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放課後、太陽はまだ傾く気配を感じさせず
白くて美味しそうな雲がふよふよと浮かんでいる


「ミスまいみっ!」

「(穴熊、化学教師のくせになんで“ミス”とか使うんだろう。)」

「ミスまいみ、聞ーぃているのかぁな!?」

「あ、はい。」


私は、暖房がほんのり効いた職員室で穴熊と向かい合っていた


「ミスまいみ、急に呼んぅで悪かったーね!」


地方(どこだかわかんないけど)の訛りに、変な喋り方が混じって穴熊の国籍を疑ってしまう


「まーあ、君を呼んだのは理由があぁってーね!?」

「あ、はい。」

「昨日のハーナシなんだけどね、ミスまいみのバイートでね!」

「バイト、ですか?」


私が言うと、それに激しく頷く穴熊の頭髪が乱れた


「(可哀想な頭皮だなあ…。)」

「きのーうね、
生活タントゥーのテンティーがぁぬぇ?」

「……は?」

「いやだかーらね?
生活担当ぅのセンセェがーね?」

「あ〜…あぁ、はい。」


一瞬、目の前に宇宙人でも居るのかと思ったが、言い直した穴熊の口の動きで理解した


「ミスまいみがーね、こうすぉくいふぁんをしたと言ってきーてね。」

「…こ、うそく…違反(かな)?」

座った先生は肩をすくめて溜め息をついた


「そぉーう、本校はねぇ、バイートはぐぇんそく9時まどぇだろーう?」

「…、…はい。」

「だけーど生活タントゥーの先生がぐぁ昨日ぐうずぇんミスまいみをーね、みたと言ってーきーてね。」

「…、…?」


生活指導の先生が座る机をウザったそうに見ながら言う


「すぉーれがぐぇんそくのくぅずぃを過ぎてたかぁらね、ぶぉくかーら注意をすぃて欲しーいと言われーてぬぇ…。」

「あの、…先生。」

「むぁあこれーからは気をつーくぇてくれーれぶぁいいーくぁあらね。」

「…、…。」

「ブァイートが悪いぃ事どぅぁとは言ってないーくぁら、ミスまいみがーね、うん、好きなーだくぇやーれぶぁいいーと思うぅよとぅえんてぇせーはぁ、まあミスまーいみがぐぇんそくをまむぉってくれーれぶぁしょれーでいいーぅわけどぇ」

「先生、言ってる意味がもうわかりません。」


私はそれだけ言って足早に職員室を後にした

後ろから『ミスまいーみ!』とかなんとか言ってる穴熊は日本人じゃないとみた








王子様はご機嫌ナナメ。
  〜まいみ、苦渋の決断〜








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