愛は儚く美しく
□俺は男だ。
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あいつが笑うと
僕の心臓はどくん、と
暖かく脈を打つ
あいつが泣くと
僕の心臓がきゅうっ、て
締め付けられる
(泣いてるの見たこと無いけど)
それよりなにより、
この気持ちにどうも
納得できないのは
これが原因なのだろう
そうなんだ、これなんだ
僕は、
-俺は男だ。-
「じゃあ、明日まで戻らないからね?」
「うん。」
「夜はちゃんと戸締まりするのよ?」
「わかってるって。」
「あ、晩御飯は冷蔵…」
「冷蔵庫にあるの適当に食べるよ。」
玄関で、母さんは何度も僕に確認をする
と言うのも、母さんが単身赴任している父さんの元へ泊まりに行くからだった
「あとは…、」
「母さん、電車乗り遅れるよ?」
「あ、そうねっ。」
もう僕は高校生だが、母さんから見たらまだ子供らしくて
子供だけを残して家を空けるのは不安のようだ
「よし、じゃあ行ってくるわね。」
「行ってらっしゃい。」
母さんが靴を履いたのを確認し、カバンを手渡す
「光ちゃん、あと一個。」
カバンを受け取った母さんが人差し指を立て真剣な眼差しを向けてくる
「なに?」
「憐ちゃん、起こして。」
固い表情を崩して笑いながら言う母さんに、僕も笑った
「了解。」
「じゃあね。」
僕が頷いたのを確認した母さんは、玄関のドアを閉めながら手をふった
僕も手を振り、母さんの背中を見送った
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