main

□叶わないならいっそ
2ページ/3ページ


「……ふぅ…んっ」

深いキスをすれば耐えきれずに甘い吐息が洩れる。

新羅のその声は、俺を一層煽り立てた。



……もっと新羅の声が聞きたい。

もっと新羅が欲しい。

もっと新羅を愛したい、……愛されたい。



愛されたい、なんて、図々しい。分かってはいる。

分かってはいるけれど、好きならば相手からも好かれたいと思うのは至極当然のことだろう。

唇を離すと銀の糸が二人を繋ぐ。

新羅は力が抜けてしまったようでその場に座り込んだ。

「っ、君さ、こういう事して俺に嫌われるとか、考えたことない?」

「……分かってる、」

「じゃあどうして……!!」

「……だって、こうするしかないじゃねぇか、新羅は、例え俺が正攻法で告白しても断るだろ?」

「っ、」

息を飲み目を反らす新羅。

それは間違いなく、肯定だった。

……分かってる、分かってる、分かってる、分かってる、分かってる、んだ。

新羅から愛されることはないことも、こんな方法で新羅に好きになってもらえることはないことも、全部。

だけど、俺の中で渦巻く想いは抑えきれなくて、結果、溢れ出してしまう。

いっそ、臨也のように全ての人を愛せたなら、まだ幸せだったかもしれない。

でも俺が愛したのは新羅で。

おそらく新羅しか愛せないのだろう。

今の俺の救いは、新羅がまだこうして話してくれているということ。

手段を選ばなければ、逃れられるはずの俺のキスを受けてくれていること。

叶わないならいっそ、完璧に拒絶してくれればいいのに。

新羅の優しさは俺を救い、俺を傷つける。


「新羅、好きだよ」


今は、まだ完璧に嫌われていないようだから。

そのうち嫌じゃないと思っていてくれればいい。

……結局のところ。

新羅に愛されることはないと分かっていても、期待してしまう俺がいるのも確かなのだ。






―――――――――――
Next
→あとがき。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ