見えないキモチ 〜後日談短編集〜

□1 如月大和の千思万考
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 昼休みになって、俺は飛鳥を誘って屋上へ行った。それぞれ自分で作ってきた弁当を出して、昼飯にする。飛鳥の弁当は、相変わらずバランスがよさそうだ。今度は、勉強だけじゃなくて、弁当のおかずの作り方も習いたいかもしれない。って、今はそんな話じゃなくて。

「飛鳥、昨日のことだけどな・・・」

心配かけたから、ちゃんと、知ってもらいたかった。上総のことはあいつのプライバシーとかの問題もあるだろうから、簡単にしか説明しなかったけど。

 飛鳥は、真剣な顔で、俺の話を聞いていてくれた。そして、最後まで話し終わったところで、初めて口を開いた。

「ほんなら、おねえはんとは、仲直りできたんやな?」
「あぁ。」
「ほうか。よかったなぁ。」
「ホント、ありがとな。」

 飛鳥には、感謝してもし足りない。俺が・・・ちゃんと上総と向き合えたのは、飛鳥との電話があったからこそだ。でなきゃ、俺は自分がどうすればいいのか見当もつかなかった。昨日のうちに和解なんて、できなかったかもしれない。

「・・・で、大和は、それでえぇんか?」

 へ?

「なにが?」
「他に、言いたいことは無かったんか?」
「・・・別にねぇけど?」

 俺が小さく笑いながら言っても、飛鳥の真剣な表情はそのままだった。

「ホンマか?・・・ちゃうやろ。あんた、今自分に嘘ついてるんちゃう?」
「何言って・・・」
「おねえはんや、伊予はんには言えんかったかもしれへん。けどな・・・うちには、本音話してや。聴いたることしかでけへんけど・・・その気持ちそのままにしたら、今度はあんたが壊れてまうで。」

 ・・・・・・俺の、本音・・・?

「本音なら、昨日言っただろ?ホントは一生懸命勉強してるのに・・・」
「そのことやない。」
「なら・・・」
「お母ちゃんのこと、納得しきれてへんやろ。」
「え・・・・・・」
「おねえはんのことは、伊予はんからお話あって。けど・・・大和は・・・なんや、我慢してるんちゃうの?」

 我慢?俺が?

「言いたいことがあるなら、言うてみ。」


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