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『そのままの君で』


「ゾロ、お前変。」

甲板からの船長の大きな声。
その声にみんなは背筋が凍った。

「・・・ルフィてめぇ・・喧嘩売ってんなら買うぞ」

「そうじゃねぇよ、お前なんか変。」

ルフィはまた繰り返す。
『変』という言葉を。

「俺はいつもとかわんねぇぞ!!」

「いんやぁ?お前元気ねぇもん。」

動物的直感というのだろうか、ルフィは淡々と答える。
クルー達は静かに首をかしげた。

「けっ、くだらねぇ。」

ゾロはそう言ってまた鉄の串刺しを振りまわす。

「・・・・うーん」

ルフィは唸る。
そして。

「ああ!そっか!」

そう言ってキッチンに向かった。


〜キッチン〜

「サンジ!」

「!?なんだルフィ、おやつにはまだはえぇぞ?」

「ちげぇよ!」

ゾロにお前なんかひどいこといったか?

その声にサンジは動きを止めた。
そして覚悟を決めたように。

「・・どうしてそう思う?」

「ゾロが元気ねぇ、それにお前のことをみてねぇから。」

本当にすごいと、思う。
俺より年下のルフィはよくクルーを観察している。

本当にすごいと思う。


「・・・・、あいつに・・女だったら可愛いよなって言ってからああ、なった。」

「・・・・。」

そうあれは3日前。
ゾロと何気ないことで喧嘩したときに俺が口走ったのだ。
その時のゾロの顔は頭から離れない。
寂しい、辛いいろいろな感情がつまってる顔だった。

「・・・サンジ。」

「・・・・なんだよ。」

「お前さ、ゾロが女だとして考えてみろ。」

「・・・?ああ。」

ルフィは椅子に座ってゆっくりと話し始める。

「まず、喧嘩は全力でできねぇ。」

「・・・つまんねぇな。」

「それに、刀3本も持てねぇ。」

「・・・それもつまらねぇ。」

「あと、あのすっぽりと納まるからだが一回り小さくなる。」

「・・・いやだな。」

「それに・・・。」

「・・・!!!」

ルフィの最後の言葉にサンジは絶句した。
そうだ、そうだそうだそうだ!
サンジは急いで甲板に飛び出す。
その後をルフィは見守って。

「手間かけさせるなぁ、あの二人は。」

船長の顔でつぶやいた。


〜甲板〜

「女か・・・。」

ナミやロビンをちらちらと観察する。
すべすべの肌にふっくらとした唇、そこから出る綺麗なソプラノ、弾力のある胸に、スラリとしたボディライン。

全部、俺にないもの。
サンジはやはり女の方がいいのか。
俺は男で、無愛想でうまく感情を表にだせない。

そんなのを女好きのあいつが・・・。


「・・・・サンジ。」

俺はその名前を言ったあと、また無言で鉄を振り回す。
すると。

「ゾーーーーーローーーー!!」

「!?」

金髪が俺に向かって走ってくる。
俺はそれを全力で受け止めた。

「ゾロ!ゾロ!ごめん!本当ごめん!」

「???」

訳がわからず俺は慌てた。
何に謝っているんだこの男は?

「お前はお前でいい!」

「?」

「ごめん、男であるロロノア・ゾロが好きだ、俺」

そう言って俺の耳元を首筋にキスを落としていく。

「このすっぽりと納まる身体が好きだ、ちょっと筋肉ついててイイ感じだし。」

「このふんわりとした髪型も好きだ。」

「2本の刀を扱うこの指も手も腕も好きだし、一本加えるこの形のいい唇も好き。」

「あと、俺の蹴りを受け止められる足も好きだ。」

「・・・・。」

「それに!!」

「お前のその低い声が一番好きだ!」

べらべらべらべら。
彼は休みなく話す。

「・・・俺のこと嫌いじゃねぇの?」

「ごめん、本当ごめんな?ゾロ。」

ぎゅぅ。
欲しかったぬくもりが今この体に溢れてる。
それがとてもうれしかった。

「ありがとう。」

「!!!」


その夜、彼等は死ぬほど愛を確かめ合ったとさ。


Fin.

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