文
□出会い
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今日、面白いことがあった。
道場破りに来たその子は、若くて、身長も低くて。
それなのに、鋭い目は獰猛な獣のように僕らを睨みつけた。
こういう目をもつ人は、腕がたつ。
きっと、相当強いんだろうな。
僕は胸がうずくのを感じた。
だから、その子の対戦相手に自ら望みでた。
その時の僕はその子に夢中になる日が来るなんて、きっと考えもしなかったんだろうな。
そう。
それが。
僕と斎藤 一くんの出会いだった。
僕はどこか、まだ部屋にいるはずのその子を探した。
その子も、僕と一緒で怪我しちゃったから。
いや、怪我しちゃったんじゃなくて、僕が怪我させちゃったんだけどね。
その子も僕に怪我を負わせた。
あの重い木刀をあんなに振り回せるなんて、正直、驚いたや。
僕も振り回してたけど。
途中で土方さんが止めたから、おあいこかな?
そういえば、名前、何て言ったっけ?
確か・・・・・。
「さいとう・・・はじめ、くん」
そう名乗ってた気がする。
僕は適当に手前の部屋から見ていった。
中だけ覗いて、その子がいなかったら次の部屋。
結局、全部の部屋を覗いてみたけど・・・その子の姿はなかった。