うわきぶん

□宣戦布告
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瞳を閉じても
消えることはない


戦場に降りる、

繊細で、

鮮やかな、

光より眩いほどの



強い蒼を










【宣戦布告】












「今日も甲斐は平和でござるな」
「旦那、呑気なこと言ってると、敵に足元救われちゃうよ?」
「わ、分かっておる!しかし、こうも平穏であるのは久しぶりではないか」

主人の言葉に佐助は目を丸くした。
今は戦乱の世。
確かに最近は戦続きだったためか、こうも何もないとどうも何か裏があるのか、と疑う反面、平和に多少は気が緩んでしまう。

「・・・まあ、確かにねぇ」

佐助は僅かに口元を緩めた。
しかし、戦はしていないとはいえ、日々、暇ではないことにかわりない。
今日だって、二人して甲斐の都より少し離れた場所を見回りに来ているのだ。
雑木は敵にとっても滑降の隠れ場になる。
そう見込み、見回っていると、幸村は不意に空を見上げた。
空は青々としていて、曇一つない。
濁ることのないその色は、まるで。

「そういえば、政宗殿は今頃、何をしておられるのだろうか?」
「へ?」

いきなりの幸村の一言に佐助は目をぱちくりと瞬かせた。
それから、自己解釈をする。
幸村と政宗は宿敵同士。
信玄も時折、何の前ぶれもなく、宿敵である謙信のことを話す。
それと全く一緒で、特別な意味はない。
そう考えることにしたのだ。
一人、そうに違いないと、頷く佐助と、それに気付いていないように話を続ける幸村。

「最後に会ったのは、いつであっただろうか?」
「あれ、旦那?」
「会いたいものだ・・・」

その表情に佐助は再び驚く。
いつもの元気な明るい笑顔と違い、ほんわりと優しげでありつつ、どこか艶っぽい微笑。
いやいやいや、本気でっ!?
思わず口もあんぐりと開いたままで、佐助はふるふると頭を左右にふる。

「だ、旦那」
「どうした、佐助?」
「俺様、聞きたいことがあるんだけどさ・・・聞いてもいい?」
「何だ、水臭い。俺と佐助の仲であろう?勿論だ」

そうにっこり、といつもの微笑みを幸村が浮かべれば、佐助はごくり、と唾を飲む。
しかし、あのさ、その、と佐助が先を言わないからか、だんだんと幸村はじれったくなってくるが、そのくらい重大なことなのかと自己を押しとどめる。
そのかいもあってか、佐助は心を決める。
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