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□09-情報屋シド
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ギィィィ…


俺がその扉を開けると、そこは長い一本道…というより、廊下が続いていた。

ホールと比べて、気味の悪いくらい静かだ。

廊下といっても、商店街のようにところどころに小さな店がある。

しかし、下を見れば…

目のすわった人やら今にも死にそうな人が転がっている。

どう見ても、心も体もボロボロだ…。

「ほら、あれ」

ニカが前方を指さした。

「あそこがきっとシドさんの情報屋だわ」

そこには小さな店がぽつんと立っていた。

「あれが…」

前方に見えるけれど、少し遠い距離にありそうだ。

俺らは転がっている人を踏まないように注意して歩いた。

しかし…

ガシッ!!

「「Σひっ!!」」

急に足が重くなり下を見ると、さっきまで転がっていた人たちが俺たちの足にしがみついている。

「な!ちょっ、離せっ!!」

軽く足を振ってみるが、なかなか離れない。

ニカも必死で振り払っているが、離れないようだ。

「「ナニカクレェ…ナニカ、クイモノヲ…クレェ……」」

俺らの周りに、今にも死にそうな人たちがたくさん寄ってくる。

「く…地獄絵図みてぇだ」

ニカと俺はどんどん引き離されて、人に埋もれていく。

…どうすればいい…?

チラッと周りを見ると、少し上の方に、店の玄関の横にくっついている看板を見つけた。

…よし、ラッキーっw

「よっと…」

ジャンプしてその看板につかまり、身体を揺らして店の屋根に上った。

屋根の上を走って、ニカの近くまで行く。

「カノンっ!!」

「ニカ、これに掴まって上ってこい!!」

片方の袖をしっかり掴んで、自分のコートをニカの方に勢い良く投げた。

ニカはそれを見計らって猫に化け、コートにしがみつく。

「よし!」

俺はコートをたぐり寄せた。

屋根の高さまで来ると、ニカは俺の方へ飛び移った。

「「……ふぅ〜」」

二人でため息をつき、ひとまず安心して笑い合った。

「なんなの、あいつら…」

「どうなるかと思った(苦笑」

俺がコートを羽織ろうとすると、ニカが”あっ!”とある一点を見つめている。

「ん?」

俺もつられてそこを見てみると、

「あ〜あ…。穴開いちゃったじゃん…ニカ、爪立てすぎ(笑」

「ご、ごめん。帰ったら、縫ってあげるから、ね?」

ニカがそう言ったので、俺はあっさり許した。

「ねぇ…気付いたら、もぅこんな所まで来てたのね」

ニカがそんなことを言うから、俺は周りを見回した。

「…なんだ、もぅ着いちゃったじゃん。シドって人んトコ」

「そうみたいね」

俺らは、行き止まりまで来ると屋根から飛び降りた。

さっきまで転がっていたような人は、全くと言っていいほど見当たらない。

目の前にある店を見ると、看板にはしっかりと”情報屋シド”と書かれてあった。

「間違いないわね」

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