Painless
□06-クライアント
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そこに座っているクライアントは…
スーツを着て、手にはシルクハットのような帽子を持っている。
顔は、皺だらけで、ニコニコとこっちを向いて微笑んでいる瞳は、すごく優しそうだった。
「よろしくお願いします」
そのおじいちゃんは、丁寧に頭を下げた。
俺らも慌てて頭を下げる。
「さ、あいさつも済んだ事ですし、本題へ…」
そこにアレンさんが割って入ってきた。
ティーから、今回の任務に関する資料を受け取る。
…なんだこれ!資料少なっ…
俺らが受け取った資料は、3,4枚の紙を左端で止めてあるだけ。
ペラペラだ…
いつもは、10枚〜15枚くらいあるのに…。。。
俺がそんなことを考えていると、隣りのニカが同じことを思ったのか口を開いた。
「あの〜…資料、これだけなんですか?」
「そうだよ」
アレンさんは、笑顔で答えた。
笑ってる場合じゃないし!
「てことは、そんなに情報がない。という事ですよね?」
ニカは、深刻な表情で言った。
「そう。今回の情報は、それだけ。詳しいことは僕にもわからないから、君達とクライアントさんを呼んだのさ」
「「…」」
「でも、ニカちゃん。君は、キリヒトの情報を持ってる。それに、カノン君は、一度遭遇しただろう?」
「だから俺らに?」
「そう。まずは、クライアントさんの話を聞いて」
そう言って、「どうぞ」とアレンさんは、おじいちゃんを促す。
「まずは、自己紹介を…。私は、古野と申します」
おじいちゃんは、ゆっくりとした口調で言った。
「カノンです」
「ニカです」
俺らも一応名乗っておく。
「本題ですが…、私はある御方を探しているのです」
そう言って、おじいちゃ…古野さんは、胸ポケットから写真を取り出した。
その写真には、一人の女の子が写っていた。
でも…
どこかで見た事があるような…
俺は思い出す事ができなかった。
「この子は古野さんのお孫さんか何かですか?」
ニカは古野さんに尋ねた。
しかし、古野さんは首を横に振って答えた。
「この御方は、私が執事として仕えていた家のお嬢様です」
「古野さんは、この写真の子の執事だったんですね?」
「えぇ。しかし、1年程前に消えてしまって」
「消えた…?」
俺は、古野さんが言った言葉を繰り返して言った。
「はい。消えた…というか、私は、連れ去られたとしか考えられないのですが…」
古野さんはそう言って俯いてしまった。
「どうして…どうして古野さんは、連れ去られたと思うんですか?」
またニカが尋ねた。
「それは…1年前にある事件が起こって…」
「ある事件…」
「その事件の詳細は、おそらく私しか知りません。でも、もしお嬢様が見つかるのなら…」
そう言って古野さんは重たい口を開き、事の真相を話し出した。
第6章 END
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