Painless

□05-黒猫
1ページ/4ページ










第5章 黒猫


涼しい風が吹く心地よい朝


何も見えない真っ暗闇の中、深呼吸をする


身体に当たる風


上からカサカサと葉と葉のこすれ合う音が聞こえる




俺は、愛刀の柄を掴み、構えた。

そして、刀を抜き、振る。


「ふぅ…」

静かに息をはく。

風に吹かれて落ちてきた葉は、俺の愛刀によって真っ二つにされていた。

時折吹く風がそれを散り散りにさせる。

俺は目隠し代わりにしていた布を外した。

「まぶし…」

太陽の光が強すぎて、思わず目を細めた。

その時―…

「…っ!?」

ふと後ろに気配を感じた。

それと同時に、振り返って刀を突きつける。


「……」


俺は刀の先にいるものを見て、刀を黙って鞘に収めた。

そして、はぁ…と安堵のため息をついて、話しかける。

「なんだ…ニカか…」

俺の目の先には、1匹の黒猫。

「そうょ。悪い?」

黒猫は、俺の近くまで来て言った。

そして、次の瞬間…

黒猫がいた場所には、ニカが立っていた。

人間の姿になったニカは、不機嫌そうに俺を見つめている。

「びっくりした?」

ニカは、腕を組んで偉そうに尋ねてきた。

「…ちょっとね(苦笑」

そう正直に答えた俺に、ニカはニヤっと口角を上げ、馬鹿にしたような眼差しで言い放った。

「ビビリ♪」

「なっ…!!」

俺はそんなニカの態度にムカッと来て、精一杯言い返そうとした。

「お、お前こそあんな格好で寄ってくんな!野良猫っ!!」

「なによっ!!仕事してきたんだから、しょうがないでしょ!」

魔女(魔法族)の血筋であるニカは、変身術を得意として

情報を集める時などは、よく黒猫の格好に変えて行動している。

Painlessには、こういった特殊な能力をもった人が集まってくる。

そして、その能力が難度の高い任務のために役立つ。

俺もニカもまた、その1人。

しかも同じ頃にPainlessに入ったため、仲がいいのか悪いのか喧嘩ばかりしていた。

そして、今もどうでもいい口喧嘩が続いている。

しかし、珍しく先に折れたのはニカだった。

疲れたとばかりにため息をつくと、本題に入る。

「どうだった?久しぶりのオフは」

俺は木にもたれかかって座り込み、昨日の大惨事を話した。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ