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□03-ハプニング
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第3章 ハプニング


俺は刀が研げる時間まで暇を潰すために、商店街を見て回ることにした。

「…」

そして、歩いていてある事に気づいた。


…あれ、なんかさっきと雰囲気が違う


立ち止まって、周りを見回した。

武器屋に入るまで賑やかだった商店街は、しーんと静まり返っている。

外に出ている人はほとんどいない。

というか、俺だけ…?

しかし、店を閉めているわけではない。

店員も買い物に来たであろう客も、店の奥の方に入ってしまっていて、まるで隠れているようだった。

「おい!早くお前も店に入れ!!」

俺が何故みんなが隠れているのかわからずキョロキョロしていると、見覚えのある男性に声をかけられた。

「あ!楽器屋のおじさんっ!!」

俺はその男性を見て、嬉しそうに笑って言った。

しかし、楽器屋のおじさんの表情には余裕がない。

いつものたくましい顔が、若干強ばっている。

「…どうかしたんですか?」

俺は一番言いたかった言葉を口にした。

「いいから…。まず、中に入れ」

そう言って、楽器屋のおじさんはそそくさと店の中へ入っていった。

それに続いて中に入ると、そこには数人の客が息を潜めて隠れていた。

楽器に興味があって来た人は、ほとんどいなさそうだ。

その場しのぎのためだけ…。

その様子を見かねて、おじさんは声を潜めて俺に説明し始めた。

「この頃、よく来るんだ。あの…隣町の…」

「…隣町の?」

「…と、隣町のキリヒトが」

「え?!」

俺が声を上げると、おじさんもその他の人々も、俺を睨みつけた。

「す、すみません…」

俺は、声のトーンを低く小さくした。



キリヒトのことは聞いた事がある。

俺らの住んでいるこの町はとても広いから、店の数も多く、けっこう都会だ。

隣町とか遠くからも、必要なものを買い揃えるためにたくさんの人が来る。

そして今日は運悪く、キリヒトという残酷で卑劣だと有名な男が来ているらしい…。

俺はどんな男か見た事ないけど、今は自分の愛刀を持ち合わせてないし…

なるべく関わらないでおこー。

まぁ、命が危なくなったら…対処するしかないけど…。


ガツンッ!


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