Painless
□18-目標
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誰も入ってこないのを自慢の耳で確認して、人間の姿になって動物たちのいる部屋に入った。
そして、私はドア付近にある鍵を取って、あるゲージから子犬を1匹出した。
『くぅ〜ん…』
かわいそうに…
こんな暗くて気味の悪いところにいたら、元気もなくなっちゃうよね;;
「今、助けてあげるからね」
聞こえないくらいの小さな声で言って、降りてきた天井の四角い穴の中に優しく入れた。
うーん…あと2匹くらぃ…
そう思っていた時
ガチャッ!!
「っっ!?」
急に誰かが入ってきた。
ヤバイ!!
助ける事に夢中になって、周りの音を気にしていなかった;;
私は咄嗟に猫になって、自分が通れるくらい隙間のあいた鉄格子の牢屋の中に入った。
ふぅ…
ばれて…ないよね;;
「あーもぅっ!!なんで、イズミがこんなトコに来ないといけないわけ??汚らわしいったらありゃしなぃっ!!!」
何処かで聞いた事のある声だった。
この前、3人で久々に再会した時に現れた、憎たらしい女ね!
あんたのが、汚らわしいっつーの!!
早く出てけっ…
私は心の中で叫びつつ、彼女の様子を見ていた。
「トカゲ…トカゲ…あ、いた」
彼女はお目当てのトカゲを見つけて、嫌そうな顔でトカゲをつまみ出し、違うケースに入れた。
お願い!早くこの部屋から出ていって…
「あら?」
「っ!?」
彼女はドアとは反対方向である、私の方に近寄って来る。
なんで、こっちに来るのよぉっ!!
しかし、彼女の目線は私ではなくて、上の方…
「こんな所に四角い穴なんてあったかしら…?」
ま、まずい…
彼女は、その穴の中を少し背伸びをして覗き込む。
お願い!!
子犬ちゃん、ちゃんと静かに隠れてるのよ?
鳴いたりしたら…もう此処で終わり。。。
お願い!見つかりませんように…(>人<;)
私は、牢屋の中から願うことしかできなかった。
でも、すぐに…
「ま、いっかw」
私の願いが通じたのか、あのイズミという女はトカゲを持って出て行った。
ふぅ…
危なかったぁ;;
私は、彼女の足音が遠ざかっていくのを確認した。
よし!この牢屋から出なきゃ。
しかし、私は、すごく嫌な予感がした。
太い鉄格子同士の間は、私が通り抜けられる程広い。。。
そして、後ろから感じる…
熱い息…そして、喉が鳴っているような音…
私は、ゆっくりとふり返ってみた。
グルルル…
そこにいたのは…
大きなクマ;;
うわぁー…ピンチだわ…(泣
今にも飛びかかって来そうなクマから、ゆっくり少しずつ距離をおく。
見つめ合いながら…;;
あと…もう少し。
もう少しで鉄格子の外に…
後ろ向きで、鉄格子の間に身体を通す…。
と、その時
ガッシャァァン!!!!
クマが私に飛びかかってきた。
*
「はぁ…はぁ…」
なんとか私は、そのまま鉄格子の間をすり抜け、牢屋の外にでることができた。
間一髪ってこの事ね;;
そんなことを思いながら、人間の身体に戻って治まらないドキドキを抱えたまま、また別のゲージへと手を伸ばした。
*
「ふぅ…今日は、この3匹でいいか」
子犬の他に2匹をまたその穴の中に入れて、自分もその中に入る。
さっきとは違う小さな鉄格子をその穴の中にはめて、元の状態に戻した。
私は3匹を連れて空洞の中を歩き、やっとのことで外に脱出した。
第18章 END
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