短編
□初恋
1ページ/1ページ
「いねぇか…」
声にだしたつもりはなかっただろう。
窓の外を見ていたXANXUSはぽつりとそう…一言だけ呟いた。
「ゔお゙ぉいっ!!ボスっ、何がいねぇんだぁっ!!??」
「…何でもねぇ」
「?」
珍しく、カスと言われなかったことが気にかかる。
しかし、これ以上言ったら、何が飛んでくるかわからない。
スクアーロはそれ以上何も言わず、持ってきていた報告書をデスクの上におくと、そのままXANXUSを眺めていた。
「…何だ」
流石はヴァリアーのボスともなる男だ。その気配に気づき、鋭い瞳でスクアーロを睨んだ。
「最近、変だぜぇ?」
「…何が言いてぇ」
「だってよぉ…俺が来る度に窓の外見てるしよぉ…」
「…」
自分でも意識しているつもりはない。
それがXANXUSの心の思いだろう。
けれどそれを部下に言うほど彼の心は柔らかくはなかった。
「カスが…失せろ」
「…」
それ以上、何を言っても無駄だろう。そう察したスクアーロは部屋からでていった。
「(…)」
自分でも、自身がおかしい事くらい気付いていた。
けれど、この感情が何んなのか…それがどうしてもわからない…。
「(俺は…)」
意識せずとも、また、目は窓の外。
そうしているうち…
探しているものを…見つけた。
歳はそんなに離れていない。
名も知らぬ…
女…。
XANXUSの目はその女から離れることなく、追った。
彼女が窓の枠から消えたあともなお、彼の瞳には映っていた。
「…」
その気持ちはわからない。
超直感があっても無駄なのだ。これ以上考えることはせず、部屋をでた。
「ゔお゙ぉいっ!!」
「スク、うっさいっ!」
「生意気な事言ってんじゃねぇぞぉっ!! 」
そう言うスクアーロの頬は赤く、話している彼女もまた幸せそうだった。
「ベールリンっ」
「何?」
「超、すきぃっ!」
「何、言っちゃってんのー??王子のほうがお前のことすきだからー」
そこにあるのはお互いだけの…空間。
「ボスさんも好きな奴ぐらいいるだろぉ?」
いつかスクアーロがそんなことを言った。
「(ぐだらねぇ)」
その空間。
その記憶。
そして、窓の外のあの女。
すべてが繋り、リンクする。
「はっ」
また、一人呟いた。
始まりもわからないその恋を…
「俺が女に惚れるなんてな」
話したこともない女との恋を…
初恋を…
成就させるため…
「カス、少し、付き合え」
なんでもできるような…
そんな気がした…。
────
ボス乙女(´・ω・`)
.