短編

□世界を敵にまわしても
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学校で使っていた筆箱がなくなった。


死んだ親が買ってくれたものの中で唯一、残ったものだ。


私の親は死んだ。



私が今のところ半分もない頃、火事で。

もちろん、何も残らなかった。

そしてそれは…



放火だった。

人を信じられなくなった。


みんなが犯人に見えた。




けど、中学に入ってすぐ、たくさんの友達ができ、少しずつでも信じるということを知ったつもりだった。


つもりだった。






筆箱がなくなった。

なくされた。


知っていたはずだ、彼女なら。

一瞬でも親友になれたと思った、彼女だから。親のことも話していた。

今の流行にはずれた筆箱のことも話してあった。


バックも、ジャージも財布も、

なくなったのはその苛めが原因だった。



私は苛められていた。




また、人が信じられなくなった。

また…人が…


「…ゔお゙ぉい?」


『?!』


「こんなとこに座りこんで何やってんだぁ?」


学校から抜け出して裏でしゃがみこんでいると、いつからいたのか髪の長い男。


『…』

「この時間じゃ学校とかあんじゃねぇのかぁ?」

『…すいません…』

「別に俺に謝られても困るんだけどよぉ…」

『ごめんなさい…』

「……ゔお゙ぉい…スカート……汚れてんぞぉ?」

さっきまでいた教室であったことを思い出す。

「ゔお゙ぉい…なんか言ったらどうなんだぁ…!!」

『……―ッー――』


見せてたまるか…

信じられない奴らに…
弱みなんて…


涙は止まらない。

「…つまんねぇならよぉ、やめちまえばいいじゃねぇかぁ…」

『…』

「…なんかされたのかぁ?」


『…―――』

唐突に当てられたその質問に、彼を睨む目。

「…」

『……』

急に頭の上に温かいものを感じる。

久々に感じた、人の…

温かさ。



うつむいて泣いた私をその温かさが包む。

「人にはよぉ、生きてるうちには辛いこともいくつもあるだろぉ…」

遠くを見ながら…

それでも一言一言強く…

「けどよぉ…全員が敵ってわけじゃぁねぇんだぜぇ…?」

『そんなこと…』

そんなことない…そんなこと…


「信じてほしいなら、信じればいいんだぁ」


それは誰かを思い出しているようで…

「俺も信じて欲しいやつは信じることにしてんだぁ…」

『…』

「なぁ…試しに俺のこと信じてみねぇかぁ?」

『…?』

「助けてやるぜぇ?その苦しみから」

『…!!??』

「信じてみるかぁ?」









世界を敵に回しても…

一人でも味方がいるのなら…


きっと無敵になれるはず……







君に信じてほしくなった

end
 

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