長編小説

□『こんなに好きと言わせたくせに…』
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 次の日の夕方、待ち合わせ場所のレストランに入ると、彼女は先に来ていて俺を見つけると片手を上げる。
 俺はコートを脱いで彼女、瑶子が待つテーブルの方に歩いて行った。


「突然でごめんなさい。だけど、ゆっくり話せなかったから…… 」


 椅子に腰を下ろすと早速そう言われたが


「いや、俺も話したかったから」


 と言って笑顔を見せた。


 確かに四人で飲んでいた時は理恵と宏伸の二人が中心になり、瑶子は聞くばかりであまり話をしていなかった。その事を


「私、話すより聞く方が多いから」


 そう言いながら、注文したパスタを口に運ぶ。


 だけどこうして二人になると、ゆっくりだが自分の事を少しずつ話す。 まるで周りの空気が穏やかに流れている様で、時間が過ぎるのも遅く感じられた。


 決して興味をそそられるほど楽しい話ではなかったが、瑶子のまとっている雰囲気や、呟く様な話し方が心地よく、食事の後に“Afternoon”に寄ろう、そう思いながらステーキを片付けていく。


 だが飲みに来たのはいいが残念な事に次の日は仕事だと聞いて、一時間後には店を後にして瑶子を送る事にした。


 住所を聞くと途中まで方向が同じだと知り、一緒にタクシーに乗る。
 すると瑶子はいつの間にか俺の左肩に頭を乗せて、静かに寝息をたてていたのだった。



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