長編小説

□『こんなに好きと言わせたくせに…』
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 飲みに来て女性に話しかける事はあっても、話しかけられた事はなかったからだ。
 驚いて、どう返事をしていいのか考えていると


「いいですよ」


 と、あっさり宏伸が二人に答えている。話をするのが好きな宏伸らしい返事だった。


 二人の女性のうちの一人、どちらかというと活発そうな理恵は笑顔で



「ありがとう。隣に座ってもいい? 」


 と、宏伸の右側に座りもう一人の静かそうな瑶子は、頭を下げてから俺の左側に腰を下ろした。


 それが、彼女達と知り合ったきっかけになり、その日の夜は二時間ほど会話を楽しんで、それぞれに帰ったのだった。


 だが二週間後に宏伸と“Afternoon”へ行った日、偶然にも理恵と瑶子が来ていて、俺達は再び会えた事に乾杯をし、まるで同窓会で友達に会ったかのように話は弾んだ。
 これも何かの縁だからと宏伸が言いだし、俺達はそれぞれ携帯の電話番号とメールアドレスを交換したのだった。


 だからといって上手くいく訳もなく、一週間がたとうとしているのに、彼女達からは何の連絡もない。
 いや、自分から連絡を取ればいいだけの事だが、そこまでして付き合いたいとか、会いたいという気持ちはなかった。


 そう思いながら、ベッドの上で本を読んでいた時にメールを知らせるランプが赤く光るのが見えたのだった。



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