時代物系 小説

□『永遠ノ森神社』
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その女性は一目見て、事切れているとわかると、たいそう驚き、腰が抜け動けなくなった。



だが、女性の悲鳴を聞いた川の近くに住んでいた、扇子屋の二代目が駆けつけ、すぐに御上へ知らせた為、その男性はそこから運ばれ、そして間もなく身元もわかった。



死因は、頭に受けた打撲とわかり、名は千代蔵。豆腐屋の二代目で、今年の始めに所帯を持ったばかりだった。



真面目で誠実、人あたりが良く、村の人の評判もよかっただけに、悲しんだ者は大勢いた。その中に、扇子屋の二代目、政もいた。この二人は小さい頃から仲が良く、幼なじみである。



「千代蔵がどうしてあんな無惨な死に方をしたのか、さっぱりわからねぇ」



そう店先で、腕を組んで話していたのは、千代蔵を送り出してから、七日が過ぎた頃だった。



「色恋ざたもなかったのに、おかしい話だ」



不思議がる政に、相づちを打ったのは、傘屋の二代目、泰助だった。千代蔵、政と同じく、泰助も幼なじみなだけに、他人事とは思えない様子だ。


「御上に聞かれても、恨みを持っている奴なんていないから、わかんねぇよな。まあ、しばらくは見回りをするって話だから、これ以上、こんな事が起きなきゃいいけどな」



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