ファンタジー系 小説

□『影踏み鬼』
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 影が出来そうな滑り台から始まって、まだ二つあるベンチやトイレ、大きな木々が植えてある公園の外側までくまなく見て歩いて行く。
 とその時、メールが届いたのがわかりスカートのポケットに入れていた携帯を取り出す。
 開けてみるとそれは、歩実からだった。


“―― 今、信じられないんだけど“私”を見たの。だけど、ありえないよね”


 それを読んだ私は、一緒に見ていた典子に視線を合わせる。
 それはまるで、訳がわからないと確認したかのようだった。
 歩実が本当に自分を見る訳がないし、そんな事はありえない。
 そう思っているだけに、このメールは変だと感じた。


“きっと見間違いだよ。いいから早く出て来て”

 と務めて気にしていないように返信をする。
 するとその時、それまでブランコに乗っていた男の子が下りて走り出したのだった。
 きっとお腹が空いて、家に帰るのだろう。
 それでもまだ揺れているブランコは、キーキーと音を立てている。


“暖かい紅茶があるよ”

 と典子も返信して、連絡が来るのを待つ。
 いつもだったらすぐに返信が届くのに、三十分待っても返信は来ない。

「おかしくない? 」


 そう典子に話すと不安げに私を見た後


「携帯に電話しても出ないよ。どうしよう」


 と泣きそうな顔をしている。
 だけどもしかしたら家に帰っているかもしれないと思い、電話をかけると


「さつきちゃん? 歩実、どこにいるか知らないかしら? まだ帰って来てないのよ」


 そう母親に逆に聞かれて、不安はいっそう大きくなった。
 家に帰っていない、公園にもいない。
 それでは歩実は、一体どこにいるのだろう。
 心配している母親にもう一度、公園を探して学校の方にも行く事を伝えると、電話を切る。


 いくら探しても歩美はどこにもいなくて、典子は心配で瞳に涙を溜めている。
 私も泣きそうになっていたけど、ここで泣いたら歩実が帰らないような気がしてぐっと我慢する。
 彼氏ができたと聞いていないだけに、彼氏の家に行ったとも考えられず諦めて母親にいなかった事を伝えると、私達も公園から歩いて十分先にある家へと帰ったのだった。


 そして次の日。
不吉なカラスの鳴き声で目を覚ました私は、起きてから真っ先に新聞を見ながら、ニュースもチェックする。
 だけどいくら見ていても歩実に関係するニュースはなくて、胸を撫で下ろしたと同時に不安にもなった。


「さつき、顔色が悪いわよ。大丈夫? 」


 テーブルに朝ご飯の卵焼きやサラダを置きながら聞いてくる母親に、小さく頷いてから椅子に座る。
 でもあまり食欲がなくて、サラダだけ口に運んだのだった。



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