ファンタジー系 小説
□『影踏み鬼』
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一体、何でこんな事をしなきゃならないのかわからない。
いくら幼稚園の時にした事があって懐かしいからって、もう十六歳だよ。
受験から解放されて自由になったからって、高校の近くの大きい公園で中学の同級生二人と影踏み鬼なんて。
と苛々しながら私“さつき”は鬼になった為に二人を探す事になった。 探すといっても影になっている所に行けばいいんだけど、それが面倒なのだ。
大きな公園にはそれだけ遊具があるし、歩かなければならない。
それにこんな事は早く終わらせて、録ってあるドラマを見たいと思っていた。
「もう、典子も歩実もどこにいるの? 早く帰りたいんだけど」
そう文句を言いながら、足を引きずるように歩く。
七時間の授業が終わり部活はないにしろ、体育が二時間。
それだけで疲れているのに、また歩かなければならないなんて最悪だった。
このまま見つからなかった事にして、帰ろうかと考えながらベンチに座る。
まだ七月のせいか夕焼けに雲が染まり、少しだけ涼しい風が吹いていた。
目の前にある二つのブランコにはまだ、八歳くらいの男の子が乗っている背中が見える。
「さつき、何で探さないの? 待ちくたびれたじゃない」
そう話しながら隣に腰を下ろしたのは、典子だった。
今まで公園の真ん中にある象の形をした滑り台に隠れていたと、面白くなさそうに話しながらリュックから財布を取り出す。
「だって歩き疲れちゃて。それより私、喉が乾いた」
と答えると典子は付き合わせたからと、近くのコンビニで飲み物を買ってくると立ち上がった。 お礼を言った後に歩実が来るかもしれないから待っていると話すと、典子の両手に手を合わせたのだった。
それにしても歩実が遅い。
これだけ探してないのに出て来ないなんて、さすがにおかしいと思い始めていた。
いつもだったら諦めて、とっくに出て来るはずだ。
それともまだ、影踏み鬼をしたいのだろうか。
「久しぶりに影踏み鬼、しようよ」
と笑顔で言い出したのは歩実だったけど、それにしてもいつまで待てはいいのだろう。
お腹は空いているしドラマも見たいし、それにおやつも食べたいのに。
「あれ? まだ歩実来てないの? 」
そう言いながらコンビニの小さい袋を持って、典子が戻って来た。
缶コーヒーを受け取りながら頷くと、さすがに変だと思ったのか不安げな顔になる。
私達に構ってもらいたい歩実が、一時間が過ぎているのに姿を現さないなんて。
「心配だから探してみよう」
と言ったのは私で缶コーヒーを開ける前に立ち上がると、典子は頷き一緒に歩き始めた。
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