ファンタジー系 小説
□『House』
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事件があった田舎町へは、ここから電車で一時間。今月締め切りの原稿を電車で打てば、充分間に合う。
そう思いながら電車に乗ると、早速パソコンを立ち上げ原稿を打ち始めた。
電車から降りると無人駅のせいかがらんとしていて、頬にあたる風が冷たく感じられる。
駅の目の前には山が見えて、その山の方へ行くとあの事件があった森へ着く。
私はその山の方を見てから、森へ行く為にバス停へ歩いて行ったのだった。
あの森へ着いたのは、バスを十分乗り、その後歩いて十五分が過ぎた頃だった。
携帯を見ると午後三時になっていて、電波は繋がらない。
ただ、付近に住んでいる人に話を聞いて空き家へ行って見て来るだけだから、携帯が繋がらなくても困る事はないだろうそう思いながら歩く。
空き家へ着く前に、三軒の家で当時の話を聞いたが、これといって新しい情報はなかった。
一年も過ぎている為、仕方ないかもしれない。
―助けて……助けて……助けて――
空き家へと歩いていたその時、いつも夢で聞いていた声が聞こえてきて驚いた。
その声は頭の中に響いてきて、そしてはっきりと聞きとれた。
目の前、後一メートルも歩くとあの空き家に着く。
それだけに、怖くて体が震えてくるのがわかった。
私はただ、記事を書いたにすぎないのに、どうして女の子の声が聞こえるのだろうか。
近隣で当時の話を聞いても新しい情報もなかったのに、女の子は何を伝えたいのだろう。
それともこの事件にはもう関わるなと、そっとしておいてほしいと、そう思っているのだろうか。
そんな事を考えながら空き家の周りをゆっくり歩く。
外壁は剥げて元の白い色は、所々しか残っていないのを改めて見ると、風化した事がわかる。
割れた窓から中を覗くように見ると、事件があった当時のまま、ベッドと隅にはダンボールがまだ残されていた。
―助けて……助けて……早く――
その最後の声を聞いたと同時に、目の前には信じられない光景が広がり、声が出ないほど驚いた。
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