ファンタジー系 小説
□『House』
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だが、女の子が何て言っているのかがわかった時、もしかしたらあの事件で亡くなった子じゃないかと思い始めていた。
――助けて……助けて……助けて――
怖くて仕方なくて、逃げたくても逃げられなくて、ずっと助けが来るのを待っていた女の子。
ずっと待っていたのに誰も助けに来なくて、おまけに最後には――。
そんな思いがきっとまだ、あの場所に残っているのだろう。
女の子の家族に会って話を聞いた私の夢に出るという事は、まだ成仏してなくてどこかで私の事を見ていたのかもしれない。そうとしか、考えられなかった。
だけど一体、私に何が出来るのだろうか。
いくら助けを求められても警察や探偵ではないから、犯人を捕まえる事はとうてい出来ない。
警察でもまだ犯人を捕まえていないし、手がかりは不振な車と男性を見たという目撃者が数人いたくらいだった。
――助けて……助けて……助けて――
毎朝、その声で目を覚まし、何も出来ないまま時間が過ぎていく。
夢の女の子は部屋の中で歩き周り、必死にドアを引っ掻いている。
部屋は薄暗く、パイプベッドが一つあり、隅にはダンボールが幾つか乱雑に置かれていた。
そしてドアが開かないとわかるとくるりとこちらを向き、目や口、鼻に穴が空き黒く見える。
その顔をこちらに向けながら、ゆっくりと両手を伸ばし、足を引きずって歩いて来るのだ。
最初のうちは怖くて気味が悪くて仕方なかった。何度も叫んで目を覚ましたし、眠れない日もあった。
だがそれも何度も見ているうちに、避けられないとわかると諦めるようになった。
ただ取材に行っただけの私に、何か伝えたい事でもあるのだろうか。
それとも、また来てほしいのだろうか。
犯人が捕まっていないだけに無念な気持ちは残っているだろう。
それはわかるが私の夢に出てきても、してあげられる事なんてないのだが、何かを伝えたいのならまた、行ってみるかとそう考えるようになっていた。
もしかしたら見落としている事があるかもしれない。
聞いていない話が出てくるかもしれない。
そう思いながら、私はあの田舎町へ行く事を決心したのだった。
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