ファンタジー系 小説
□『死神』
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「ねぇ、おばあちゃん遅くない?」
晩ご飯を食べ終わってから母にそう聞く。
母はキッチンで洗い物をしながら
「そうよねぇ。もう十時になるのに帰らないなんて、おかしいわ。今まで一度もこんな事なかったもの。ねぇ、あなた?捜索願い出した方がいいんじゃないかしら?」
と、テレビを見ていた父に話す。母は心配して、祖母が行っているサークルや友達の所へ、連絡を取っていた。
だけど、祖母はその人達と会っていなくて、友達もどこにいるのかわからないと話していたと言う。
だからこそ、捜索願いを出して探したい、そう考えたのだろう。
「だけど、お義母さんだって子供じゃないし、意外と温泉にいるかもしれないしなぁ」
父の発言は、実にのんびりしたものだった。
だけど、そうのんびり構えていて何もなければいいけど、万が一を考えると気が気でない。
こんな時は早く動いた方がいいと思い、私は母に賛成した。
「だから、とりあえず出しておいて帰って来たら、その時に連絡すればいいじゃない。今は、いろいろな事件があるんだからね。それに巻き込まれる事だって、無いとは言えないし」
なんて、少し驚かせてみる。そうでも言わないと父は、動きそうになかった。それに、やっぱり心配だったから。
「わかったわかった。今、電話するから」
そう言うと父は、ソファーから立ち上がると電話が置いてある台の方へ歩いて行く。
それにしても、死神が来てから祖母がいなくなるなんて。
これも、死神と関係があるのだろうか。それともただの偶然?
いずれにしても、明日家の近くを歩いて、祖母の友達や知り合いにもう一度話を聞いてみようと、そう思ったのだった。
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