ファンタジー系 小説

□『死神』
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 私はあまりにも信じられなくて、これからの事をどう受け止めていいのか、わからなかった。  唯一の救いは、お腹いっぱいご飯を食べられた事。何があっても、ご飯を食べられるうちは、大丈夫よと話していたのは祖母だった。
 その祖母が、一週間後に亡くなるなんて。



「ごちそうさま。お風呂に入って来る」



 悲しいのか切ないのか、それとも死神に対して怒っているのか。
 いろいろな気持ちが入り混じり、整理がつかない。
 とにかく、もし死神に会えたら、本当かどうか聞いてみようとそう思いながら、着替えを取りに二階へ上がって行ったのだった。



 それから、目が覚めたのは次の日で、雨がざんざん降っているお昼近くだった。
 目覚ましではなく、雨の音で目が覚めるなんて歓迎できない。



 お腹が空いて一階へ下りて行くと、テーブルには朝食の用意が出来ていた。



「おばあちゃんは?」



 洗濯物をたたんでいた母にそう聞くと、朝早くに出掛けたみたいでいないと言う。
 だけど、会ってないし何も聞いてないから、どこに行ったのかはわからないという事だった。



「なーんだ。いないんだ」



 せっかく、祖父の若い時の話や結婚した時の話を聞こうと思っていたのに、出掛けたなんて。  いや、祖父から聞いてもいいけどその手の話はやっぱり、祖母から聞いた方がよりわかりやすい。



 いないのは仕方ないと諦め、久しぶりに母と録っておいた映画を見ようと、テレビ台の中を探し始めた。



 そうして過ごしているうちに時間はあっという間に過ぎて、父が帰って来た。リビングの壁にかけられた大きな時計は午後八時を示している。  この時間になっても、祖母が帰って来ないのはおかしい。いつもだったら、夕方には帰って母と一緒に晩ご飯を作っているのに。



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