ファンタジー系 小説
□『死神』
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おかしいと思いながらゆっくり歩いて行くと、家の門の近くに人影が見えた。
その人影は、目を凝らして見ると男性で約百七十センチ位に見える。 家に用事があるなら、さっさと中に入ればいいのに、そこに立ったままだった。
「あの、何か用事ですか?」
あまりにも気になった私は、男性に近づいてそう聞いてみる。
すると男性は、驚きもせず笑顔を見せて
「ああ、ある人を迎えに来ただけですよ。また来ます」
そう言って、会釈をすると背中を向けて歩いて行った。
近くで見たその男性は予想どうりで、中肉中背、銀縁の眼鏡をかけていてなかなか格好よかった。
そして、どことなく誰かに似ていて懐かしく感じた。だけど、どこかで会っているような気がするのに、思い出せない。
誰だったんだろうと考えながらドアを開け、リビングに入る。
「ただいま」
リビングには、母の陽子、母方の祖母のゆかりの二人が、お茶を飲みながらテレビを見ていた。 持っていた肩掛けバッグをソファーに置いてから、さっき会った男性の話をしてみる。
もしかしたら、二人が知っているかもしれないと、そう期待しながら。
「お母さんはそんな人、見てないわよ」
そう言いながら母は、テーブルにどんぶりと味噌汁を置く。湯気が立っている親子丼は、見るからに美味しそうだ。
「さっちゃん、もっと詳しく話してほしいわ」
祖母はそう話すと、私が座っている迎え側に腰を下ろす。
詳しくっていっても、もう話す事はないけど、とりあえずもう一度同じ事を話し、そして自分が感じた事も話しておいた。
「もしかしたら、さっちゃんが会った男性ってこんな感じだった?」
話を聞き終えた祖母は二階から持って来た古いアルバムを開いて見せる。
そこには、さっきの男性に似ている人がバイクにまたがって写っていた。だけど、この写真って……。
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