ファンタジー系 小説
□『鵺の鳴く夜に』
2ページ/17ページ
私の住んでいる小さな町には、大きな山があってその山には様々な云われがあった。
山の神様がいるとか、天狗がいるとか、鵺がいるとか。
だけど、神様や天狗、鵺の姿を見たのはほんの一握りで、高齢のおじいちゃんやおばあちゃん、その人達の先祖が多い。
だからいつの間にか、神様や天狗、鵺の存在を信じる人はいなくなり、それはあくまで昔の話で、子供を叱る時に話す程度だったと、言われるようになった。
私も、まだ五歳だった頃に、母方のおばあちゃんから聞いた事がある。
まだ春になったばかりの季節に、母と父は車で二時間かかる親戚の家へ行き、まだ用事が終わらないからと泊まる事になりその日の夜は、おばあちゃんと二人で過ごす事になった。
その日は、とても風が強く吹いていて、家の窓がガタガタと音をたてて、山の木々の葉がザワザワと揺れている音まで、聞こえてくる夜だった。
.