ファンタジー系 小説
□『 二三時 』
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信幸に誘われて、その道路へ行くのを怖いからと嫌がっていた麻美は、四歳年上の二八歳の信幸の説得に、近くの温泉に泊まろうと言う誘惑に負けて、結局は行く事を渋々OKしたのだった。ただし、条件つきで。
「行ってもいいけど、怖くなったら帰るからね。それと―――の話もなしだよ」
そう言われた信幸は、正面から麻美を抱き締めてそして、わかったと一言だけ答えた。それでも麻美はまだ信用できなくて信幸の唇をさける。いつだって、こうしてうやむやにしてきたのを、一年前から知っているだけに抵抗せざるを得なかった
「…愛してる」
そう聞いてしまうと、奥さんがいるとわかっていても嬉しくて、また言って欲しくて、途端に素直になる自分自身も、麻美には止められず、体を信幸に預けると、唇を自分から重ねる。
一緒にいる時間が限られている分、どうしても信幸に合わせてしまう麻美に、信幸は優しい言葉をかけるが、それは決して本音ではない。まるでゲームをするかのように、どこか楽しんでいる部分があった。
その事に気づいていても麻美は、文句を言う事なく、会いたい時に来る信幸に、いつも合わせていた。そして、しばらくしてから
「じゃ、明日は休みだし行こうか」