ファンタジー系 小説
□『死神』
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どう見ても、祖父だった。
「うん。やっぱり似ている。だから懐かしかったんだ」
だけど祖父じゃないのはわかる。だったら一体誰なんだろう。
「確か、裕子ちゃんから聞いた事があるわ。裕子ちゃんの旦那さんが亡くなる一週間前、自分の父親に似た男性が、家の近くに来ていたって。もちろん、父親は亡くなっていたんだけどね。だからきっと……」
と、祖母は同級生の山下裕子さんから聞いた事を話す。
だけどそこまで聞いて、嫌な感じがした。この流れでいくと、とんでもない事実を聞く事になりそうだと思った。
「だから、その男性はきっと死神なのよ。私を迎えに来たのね。裕子ちゃんから聞いたとうりだったわ」
祖母は、怖がる事なくそう話した。だけど、その話が事実だったら、祖母は一週間後に亡くなる事になる。
こんなに元気なのに、病気もしてないのにありえないと思った。
「今の時代に、こんな都会にいるのに死神だなんて、信じらんない」
と、吐き捨てるように話す。それに、なんで迎えに来る必要があるのかわからなかった。
「裕子ちゃんの話によると、あの世まで行くのに道に迷わないように、道案内をしてくれるって聞いたわ。裕子ちゃんも、どうして来たのかわからなかったから、聞いたって」
そう聞いて、一応納得はできた。だけど、死神だなんて絵本の中の話だと思っていたのに。
それより、祖母が亡くなるという事実の方がショックだった。
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