お題小説
□『何度も彼に恋をする』
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一週間振りに彼に会うのは、付き合って一年が過ぎた今でも変わらない日常で自然な事だった。
大学生の時にお互いの友達の紹介で知り合ってから、付き合うようになるまで二年。
気になり始めたのは、風邪で休んでいた三年生の夏。
ワンルームのマンションで具合が悪くて寝ていた時、たくさんのお見舞いの品と一緒に彼は
「食べられそうな物を持ってきたからな。少しでも喰えよ? 」
と言って玄関にも入らずにスーパーの袋を渡して帰って行った。
あの日はかなり体調が悪かったから、彼の気持ちが嬉しかったのを今でも覚えている。
一人暮らしで弱っている時に、友達としてお見舞いに来てくれた彼。
一人で不安な時にお見舞いに来てくれた事が、ただ嬉しくて仕方なかった。
その後、悩みや相談を聞いてもらったり一緒に映画を見に行ったりしているうちに
「付き合おうか」
と言った彼の一言がきっかけで、私達は付き合うようになった。
それから一年が過ぎて四年生だなんて本当に早いと思う。
お互いに忙しい中でも時間を作って、誕生日やバレンタイン、クリスマス等のイベントも隣には必ず彼がいた。
あまりにも幸せで不安になる事もある。
友達には贅沢だとか甘やかされているとか、彼を大事にした方がいいと言われた事もあった。
だけど私なりに大切に大事に思っているから、今ではそれでいいと思っていた。
そんな事を考えていたら、なかなか眠れなくて隣で静かに寝息をたてている彼の寝顔を見る。
仰向けで右腕を伸ばして寝ている彼の寝顔はもう何度も見ているのに、愛おしくて仕方なかった。
伸ばしているその右腕は私だけのもので、私だけの場所。
決して誰にも渡せない私だけのもの。
そう考えながら彼の右腕に頭を乗せたその時――
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