お題小説
□「その唇で…… 」
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その唇から放たれる言葉は、意地悪だった。
だけど私に向けられる時、紅い舌を見る度にいやらしさを感じさせる。 そんな彼を、私は愛おしくて仕方なかった。
私の彼は七歳年上の三十二歳。
私より三十センチほど背が高く短髪で、低いけど少しくぐもったその声が大好きだった。
友達とそのお兄さん達と一緒に、飲みに行く時やカラオケに行く時に誘われるまま着いて行くようになった一ヶ月後。
遊びに行って帰る時に通り道だからと車で送ってくれたあの日、思いきって告白をした。
それは全て、わかっての事だった。
人並みの背であまり自分に自信がなくて、綺麗な子を見る度に羨ましいと思っていた私に、自信を持たせてくれた彼。
それまでは無難な服しか着てなかったし、パーマもかけた事がなかったけど、彼と付き合うようになってからお洒落をする楽しみも知った。
だからその頃から変わり始めた私に同僚は
「綺麗になったね」
「何で今までかまわなかったの? 」
「どんな彼氏なの? 」
と今まで以上に話すようになったし、付き合い方も変わったと思う。
同僚達と遊びに行くのは楽しくて、いろいろ遊んでいるうちに男友達もできたし、交友関係も広くなっていった。
だけどいくら交友関係が広くなっても、男友達ができても私には、彼がいてくれるだけで充分だった。
でも彼は忙しいせいか週末に一度会えたらいい方で、大抵は二週間に一度しか会えない。
毎日でも会いたい私には寂しくて仕方なかったけど、わがままなだと思われたくなくて泣く泣く我慢するしかなかった。
彼と会える日にはメールが届くか、電話がくる。
その連絡を心待ちにしていても例え連絡があっても、たまにそれは用事が入って駄目になる時もある。
そんな時はがっかりするし寂しくなるけど、会えない訳じゃないと言い聞かせる事で我慢できた。
だけどその我慢も、時には耐えられなくなってたまにわがままを言う時もあった。
いつも々我慢ばっかりしていると、私だって発散させたくなる。
でもそれは、お互いにとって喧嘩の原因になる事だったし、最悪の場合別れにも繋がる。
そうわかっていても私は遂に彼に対して、口を開いた。
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