ファンタジー系 小説
□『House』
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―― 助けて……助けて……助けて――
私、今野忠志が同じ夢を見るようになってから、一ヶ月が過ぎていた。 最初は真っ暗な部屋しか見えなくて、その中から何を言っているのかわからない、女の子の声が聞こえただけだった。
部屋が真っ暗な為、どんな部屋なのかも女の子の姿もわからなかったが、それが最近では鮮明に見えるようになっていた。
私は仕事柄、いろいろな地域へ行く事が多く、三十半ばで日本のほとんどを歩いていた。
フリーのライターになってから自分を売り込み、書きたい記事を積極的にアピールしているうちに、気づくと伝えたい記事を書けるようになっていた。
今まで書いた記事の中には、殺人事件や行方不明、過労死などもある。 家族の元へ行き話を聞かせてもらい、家族のやりきれない思いや訴えたい事、悲痛な気持ちを聞く度に、それを伝えなければと思う。
その中で、残酷で悲惨な事件があった。
ちょうど一年前、ある田舎町で通学途中に行方がわからなくなった、当時小学四年の女の子が、一週間後に亡くなって見つかった。
その子は全裸で、自宅から一キロ離れた森にある空き家で発見された。
発見したのは山菜を採りに来ていた老人で、空き家の割れた窓を何気なく覗いた所、その子を発見したという。
その空き家はコンクリートで出来ていて、以前は個人で経営していた別荘のような感じだった。 森の近くに住んでいる者は空き家だと知っているから、誰も近づかないが余所から来る者の中には幽霊が出ると聞いて、面白がって入る者もいると聞いた事がある。
その空き家で発見された子は、爪には皮膚の一部が残され、足の裏は皮が捲れて血が滲んでいた。
その事から警察は逃げたくて素足で歩き周り、爪が剥がれていた事からドアを引っ掻いていたのだろうと考えていた。
爪に残されていた皮膚の一部は、おそらく抵抗した時に引っ掻いた際に残った犯人の物だと思われるが、未だに犯人は捕まっていない。
その時の空き家の様子と、夢に出てくる部屋が似ている事に気付いたのは、夢が鮮明に見えるようになってからだった。 空き家には行ってないが、新聞で見るとよく似ている事がわかる。
確かにこの事件の記事を家族に話を聞いて書いたが、それはすでに終わっている仕事だっただけに、どうして今頃こんな夢を見るのか、わからなかった。
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