ファンタジー系 小説
□「 Snow fairy. 」
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二人の男性は小学生の頃からの幼なじみで将(しょう)が一年、亮が三年の時に知り合った。
それは学童保育が一緒だった事がきっかけで当時、人気があったゲームのキャラクターの交換が二人を仲良くさせた。
お互いに幼かった二人には兄弟がいなかったせいかそのまま仲良く小学生、中学生時代を過ごした。
そして高校を卒業した後はお互いに希望していた会社で働いて、あっという間に亮は三十歳に将は二十七歳になっていた。
その二人は今では実家から片道一時間離れた山中で、ペンションを経営している。
それは二人が幼かった頃から山の中で過ごしたいという夢があったからだった。
その為ペンションも時間をかけて二人で立てて、野菜は自給自足して夏には釣りへ行って食料を確保している。
空気が綺麗な所での自給自足の生活は、二人にとって楽しく何より様々な人との触れ合いはかけがいのないものだった。
そんな生活を満喫していた二人にあるお客さんから、伝承を聞かされたのはペンションを経営してからすぐの事である。
そのお客さんは雪が積もった十二月の半ば以降に訪れて、翌年の五日までのんびりしていく。
その伝承を話し出したのはいつものように、二人と話しながら食事をした後の事だった。
六十歳前後くらいで白髪が綺麗なその男性は、「雪女の話を知っているか」と聞いてきた。
もちろんと二人が頷くと「だけどただの話だろ」と将は笑顔で答える。
亮はその後に「確か雪女に会った事を誰かに話したら、命が亡くなるんだよね」とコーヒーを飲みながら話した。
二人の話を聞いたお客さんは頷くと、自分が聞いた話では雪女は人間の精気を奪うとか、子供の生き肝を抜き取るとか、人間を凍死させるといった二人が知らなかった事を話す。
そしてその話は江戸時代まで遡り、その時代の知識人の山岡元隣の話まで持ち出した。
その人の話によると、雪女は雪から生まれたという。
物が多く積もれば必ずその中に生物を生ずるのが道理で、水が深ければ魚、林が茂れば鳥を生ずるという。
そして雪も陰、女も陰であるから深い雪の中に、雪女を生ずる事もあるかもしれないといっていたそうだ。
その話を興味深く聞いていたのは将で三歳年上の亮は、あまり興味がないようだった。
「それにしても雪女の話もいろいろあるんだね」
そう言ってコーヒーの二杯目を二人に入れた亮は、眠たそうな顔をしている。
興味のない話を聞いた上に午後の十一時を過ぎていた事で、眠たくなったのかもしれない。
「亮はもう帰っていいよ。後は俺がやっておく」
そう将が話すと亮は最初は遠慮していたが、眠たさには勝てないのか「明日はやるから頼むね」と言って、お客さんに頭を下げるとペンションのドアを開けて出て行った。
その様子を見ていたお客さんは「子供が五人もいたら疲れるだろうさ」と言って、ブランデー入りのコーヒーに口を付ける。
亮は五年前に結婚し、今時にしては珍しく子供が五人もいた。
そのせいかペンションから車で三十分先にある家に帰ると、五人の子供をお風呂に入れて相手をする為、いつも寝不足のようなものだった。
一方将はというと付き合って三年になる彼女はいるが、まだ結婚の話は出ていない。
だから後片付けを将が引き受ける事が多いが、その事で揉めた事はなかった。
それはお互いに出来る範囲内でやろうと暗黙の了解があるからで、お互いがお互いをカバーしているからである。
そんな事を考えていた将は、お客さんがロビーからいなくなっていた事に気づくと手早く後片付けを始めて帰る支度をしたのだった。
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