ファンタジー系 小説

□「待ち続けること」
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 まだロボットやアンドロイドがなかった時代から百年が過ぎた今、どの家にも手伝い用のロボットが働いていた。
 それは暮らしを助ける物として、国から補助金が出るほど認知されている。
 逆に言えばそれらがいないと生活が出来ないくらいに家は広く、時代が進んだ証でもあった。


 だがその一方で国同士の対立は無くなってはおらず、未だに戦争が続いているのも事実である。
 その為に軍事用のロボットや兵器等も造られていたが、指示を出すのは人間だった。
 全てをロボット等に頼るのはあまりに危険な為、必ず人間が何人か選出される事になる。


 選ばれるのは二十歳から六十五歳までの男性と決まっており、持病がない限り戦争に駆り出される事になる。
 それは全てデータで管理されていて、選ばれた者はいかなる理由があろうとも絶対に行かなければならなかった。


 その知らせをメールで受け取った男性、鏑木衛司(かぶらぎえいじ)はうかない顔をしながらそれを読んだ。
 長身で髪は短く二十代半ばとまだ若い。
 そのせいか結婚はしておらず、父親が残した会社を継いで忙しい毎日を送っていた。


 出発は一週間後。それまでにやりたい事ややり残した事を片付け、準備をしておく必要がある。


「駄目で元々だ」


 そう呟くと鏑木は書斎から出て、手伝い用のアンドロイド“アリス”をリビングに呼んだ。
 通常アンドロイドには名前は無くナンバーだけだが彼はそれで呼ぶのを嫌い、仮の名前を与えたのだった。


「何かご用でしょうか」


 呼ばれたアリスは足音を立てずにリビングに入ると、ソファーに座っていた彼に立ったままそう聞く。
 背丈は彼よりも頭一つ分低く、見た目は人間と全く同じである。
 話した声も作られたものだが、違和感なく人間と同じように改良されていた。


 アリスは学習能力がありそれが出来るようにプログラムを変えてもいいと聞いていた彼は、学習をさせようと思ったのだった。
 プログラムされている数は、生活をするのにも会話をするのにも困る事はない。
 だが人間が教えた事を学習できるなら、それに越した事はないと考えたのである。


「―― という事をしたいのだが聞いてくれるね」


 そう話すとアリスは何の疑いもせずに、大きく頷いたのだった。



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