ファンタジー系 小説
□『ココニキテ』
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“祐一”さんとはサイトを立ち上げてから友達が書き込みをする前に、最初に掲示板に書き込みをしてくれた人だった。 最初は小説の感想を、その後はお互いにプロフィールや日記を読んでゲームや映画、読んだ本の事などをお互いのサイトの掲示板で話すようになった。
それは次第に頻繁になって今では毎日のように、まるでメールのようにすぐに返信がある。
その事自体は楽しかったから気にした事はなかったけど、最近では好みの異性の話をする事が多く、何かにつけて
“―― そういう風に考えられる女性っていいな。僕の周りには、なかなかいないよ。
きっと彼氏がいるんだろうな。その彼氏が羨ましいよ。”
と書いてくる。同じ年で彼氏がいる子もいるけど、私や理佐にはまだいなかった。
だからって焦っている訳ではなくて、いたらいいなと思うけど絶対にほしいという訳ではない。 だから、いない事を書くと祐一さんは
“それじゃ、僕もまだ諦めなくていいね。いや、付き合いたいとかそんなのじゃなくて、友達として会ってみたいなと思ってたから。
話も合うし、会って話す事ができたら楽しそうだなと思ったんだ。”
と書いてきて驚いた。 サイトの掲示板で話していて、こんな事を書いてきたのは祐一さんが初めてで、どう返信をしたらいいのか悩んでしまう。
私は友達を作りたくてサイトを持った訳ではないし、もちろん彼氏がほしかった訳でもない。
ただ楽しく話したり交流が出来たら嬉しいと思って、掲示板を置いたのに。
“―― だから今は彼氏がほしいとか、そんなの全然考えてなくて。
仮に会ったとして、もしかしたらがっかりする事もあるかもしれないし、受験組なので勉強もしなければならないので大変です。
祐一さんは働いているそうですが、忙しくないですか? これから先、後輩も入社してくる事を考えると…… 。”
と返信するのが精いっぱいだった。
祐一さんは十六歳の私より八歳年上で、働いて二年になるという。
一年前に実家から出て今はマンションで一人暮らしをしているみたいだけど、いずれの情報も祐一さんから書いてきたものだった。
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