お題小説

□「 Taxi 」
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 久しぶりに、幼なじみの彼に会ってから一週間後。
 私達は街中にある和食専門のレストランで、平日の夕方に食事をしていた。
 私の休みはカレンダーどおりだけど、彼の休みはそうではなく平日が多い。
 仕事上仕方ないけど、彼はたまにカレンダーどおりに休んでみたいと、苦笑いしながら話している。



 こうして会ってみると小学生や中学生の話さなくなった頃とは違い、今だったら幼稚園の時のように話す事が出来る。
 話せなかったあの頃はきっとお互いに意識して、上手く話せなかったのだろう。



 彼はラフなセーターにジーンズを着て、とても落ち着いて見えて私より年上に感じられた。
 私はニットのアンサンブルに落ち着いた色のスカートだったけど、顔が小さいせいか実年齢より幼く見られてしまう。
 今さら、そんな事を気にしても仕方ない事だけど、一緒にいると気になってしまった。



「本当に変わらないのな。それで、彼氏はいるのか? 」



 食事を終え紅茶を飲んでいる時にそう聞かれ、思わず吹き出しそうになる。
 それまで仕事の話や、他愛ない話をしていたのに。



「えっ? 彼氏なんていないよ? いたら来ないって。そっちこそ彼女は? 」



 売り言葉に買い言葉じゃないけど、そう聞くと彼は苦笑いをしながら片手をひらひらさせて



「いたらここに来ないよ。なんだ、お互い淋しいな」



 そう話す。私に彼氏がいなくても不思議じゃないけど、彼にいないのは意外だった。
 だからって立候補したい訳じゃないけど、したくないと言えば嘘になる。
 それくらい彼は、素敵になっていた。
 だから積極的な子だったらきっと、アピールするに違いない。
 でも残念ながら私はいくら素敵な彼が目の前にいても、積極的にはなれなかった。



「そうだね。このままじゃクリスマスも一人かな」



 なんて話したところでここ二、三年はいつもの事で、特別淋しいと思った事はない。
 だけど、彼だったらクリスマスになる前にきっと彼女ができるだろう。


 そんな話をしているうちにあっという間に時間は過ぎ、気づくと十時になっていた。
 次の日の事を考えると、そろそろ帰らなければならない。
 いつも思うのは、どうして楽しい時間は時が過ぎるのが早いのかという事だった。










 そして無情にも時は過ぎて、あっという間にクリスマスイヴになっていた。



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